お役立ち情報

1.臨終から納棺まで

1-1.危篤になったら

1-1-1.まず行うこと

危篤状態であることを医師から宣告されたら、家族は悲しんでいるわけにはいきません。家族やごく親しい身内の者で相談して、臨終に立ち会ってもらいたい人に連絡します。たとえ深夜であっても、「夜分遅くに申し訳ございません」というひとことを添えて連絡することが大切です。

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1-1-2.誰に連絡すればいいの?

近親者に連絡する場合の目安は、通常三親等までになります。危篤になった本人と配偶者を中心にして一親等は両親と子供。ですが、「最後のお別れ」してもらうのですから、近親者でなくても、親しい人には知らせる必要があります。 一般的には

●家族や親族

●本人の勤務先や学校

●本人が役員等をしていた場合、その会社や関係団体

●日頃親しくしていた友人・知人など

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1-1-3.どうやって話せばいいの?(要点の知らせ方)

危篤を知らせる手段としてはいくつか考えられますが、やはり電話が一番早いでしょう。最近は携帯電話が普及しているので、親しい人ならすぐに連絡が取れるはず。ですが、病院によっては携帯電話の利用が出来ない場合がありますので注意します。電話は直接相手と話ができるので、最も確実に連絡することができます。知らせるときは、用件を手短に確実に伝えるます。あいさつ等は簡単に済ませて、すぐに本人の状態が危篤であることを伝えます。このとき相手に対して、来訪可能かどうかを確かめたり、「すぐ来てほしい。」などと強要する必要はありません。

知らせるときのポイントは、

●いつ

●誰が

●どこで

●どうして

●どうなった

の五点。家族や親族の場合、動揺など混乱してしまいがち。気持ちを落ち着けてきちんと明確に相手に伝えます。 もし電話がつながらない場合、留守番電話への伝言、ファクシミリ、電報を打つなどの手段もあります。電報は局番なしの115番「電報サービスセンター」で。緊急定文を使えば読みやすいので便利です。

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1-1-4.連絡を見合わせるときは?

知らせる相手が遠方に住んでいる、知らせても間に合わない、多忙な仕事ですぐに駆けつけられない、という場合は、病人の状況を見極めてから連絡するようにしましょう。

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1-1-5.危篤者に対するお見舞いはどうするの?

危篤の知らせを受けたら、近距離の場合はすぐに駆けつけてあげてください。服装は、地味なものなら平服でかまいません。喪服に着替えてから行くことはかえって失礼になってしまいます。遠方から駆けつける場合などで、やむを得ず持参する場合は、持参していることを目立たないように配慮してください。

また、危篤のときは、病人が最後の力を振り絞って死と戦っています。心から別れを惜しんであげたい気持ちもありますが、ここは短時間で切り上げるべきです。しかし、万が一の場合に備え、家族の力になってあげられるように心がけましょう。

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1-1-6.病院で危篤になったら

病院では、主に主治医が危篤であることを家族に告知するので、その旨を親族や親しい人たちに知らせましょう。

その際、病院の電話は携帯電話の利用を禁止していてテレホンカードが必要なことが多いので、遠距離の人に知らせることも考えて、少し多めにカードを用意しておいたほうがいいと思います。携帯電話を利用する場合、院内外の通話可能な場所も確認しておくといいでしょう。

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1-1-7.自宅や外出先で危篤になったら

自宅で療養中のときに容態が急変した場合は、すぐに主治医に連絡して自宅まで来てもらいましょう。

また、療養中ではなくても、心筋梗塞や脳出血などで突然倒れられる場合もあります。その場合も、直ちに医師を呼んでください。夜間や日・祝日などで、かかりつけの医師に連絡がつかない場合もあります。その場合は、119番で救急車呼んで病院へ運び入れるようにしましょう。

いずれにしても、自分の勝手な判断で危篤と断定することはできません。必ず医師によって危篤であることが確認されてから、親族や友人などに連絡するようにしてください。

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1-1-8.救急車を呼ぶ場合

救急車を呼ぶ際は決してあわてないことです。冷静に病人の年齢、状態、住所など、質問される内容にきちんと答えます。そして救急車のサイレンが聞こえたら、近くに迎えに出ましょう。救急車につき添う場合は、健康保険証や財布、診察券などを忘れずに持ち、戸締り、火の元の点検もしっかりと。

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1-1-9.遺言の確認

式が近いことを感じた本人が「遺言」の意思を示した場合、「死亡危篤者の遺言」を残すことができます。作成にあたっては、二つの条件が必要になります。

●本人の意識がはっきりとしていること

●遺産相続に関係のない三人以上の証人が立ち会うこと

この条件を満たした上で、証人の一人が遺言を口述筆記し、内容を証人三人が確認します。日付を入れ署名・押印、封印して二十日以内に家庭裁判所に提出します。裁判所の検認が得られれば、正式に遺言として成立します。

遺言は個人の意思を法的に保護し、遺産をめぐる相続人同士の争いを防ぐなどの効果があります。こうした理由から、最近では、元気なうちに、民法で規定されている遺言を作成しておく人も多いようです。用意してあるようであれば、その所在を事前にきちんと確認しておきましょう。

◆遺言書の効用

民法上、人は誰でも満十五歳に達すると遺言をすることが出来ます。(民法第九六一条)。生前は、自分の財産・品物などを、思うように自由に動かせます。

そこで、死後も、本人の意志を遺産相続に反映させるために、法律で遺言制度が定められているのです。遺言がなければ、相続財産は民法の定める相続の規定により相続人に相続されるのですが、それ以外の人や、それ以外の方法で遺産の処分を望む場合は、遺言書がなければ自らの意志のようにはなりません。また、遺言することによって、本人の死後、遺産相続をめぐっていたずらに紛争を起こすことを避けることもできるのです。

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1-1-10.キリスト教の場合

キリスト教の場合、信者が生きているうちに儀式に行います。危篤と告げられたらすぐに、所属する協会の神父(カトリック)か牧師(プロテスタント)を呼び、カトリックならば、神にこれまでの罪の許しを請う「終油の秘蹟」を、プロテスタントならば永遠の安息が得られるように祈る「聖餐式」を行ってもらいます。もし、神父や牧師が到着する前に息を引き取った場合は、家族で祈りをささげます。

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1-2.臨終のときを迎えたら

1-2-1.末期の水

「末期の水」とは一般にいう「死に水」のこと。死者が生き返るように願ったり、また死後の世界で渇きに苦しむことが無いようにと、残された人々が行うお別れの儀式です。釈迦が臨終の際に水を求めたというのがそのいわれです。

医師から臨終を告げられたら、割り箸の先に脱脂綿を巻いたものや、新しい筆の先を茶碗の水に浸し、個人の唇を軽く湿すようにします。血縁の濃い順に行います。一般的な詳しい順序としては

1.配偶者

2.その子供(年齢の高い順)

3.両親

4.兄弟・姉妹

5.その他親族

6.友人・知人

のようになります。しかし、人数が多い場合、遺族だけが末期の水をとり、あとの人は順々に最後の対面と合掌だけで済ませるようにします。

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1-2-2.湯灌のしかた

たらいの水に湯を足してぬるま湯を作り、遺体を拭き清めるのが本来の「湯灌」でした。ですが現在は衛生面への配慮から、アルコールに浸したガーゼなどで体を拭き清めるのが一般的な方法です。その後耳や口、鼻などに、汚物が出てこないように脱脂綿を詰めます。病院でなくなった場合は病院側でやってくれますが、その際新しい着替えを用意しておきましょう。

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1-2-3.死化粧のしかた

遺体を清めたら「死化粧」を施します。男性の場合はひげを剃り(地方によっては遺体に刃物をあてることを嫌う風習のところもあります)、女性は口紅を塗るなど、薄く化粧をしてあげましょう。髪を整え、爪も伸びていたら切ってあげます。

長患いなどのために面やつれが目立つようなら、口に綿を入れて頬をふっくらさせます。死化粧は、きれいな姿であの世へと旅立たせてあげたいという気持ちで行うものです。

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1-2-4.とりあえずの弔問客を迎えるには

悲報を聞いて駆けつけた弔問客には、死化粧が終わるまで待合室などで待機してもらいましょう。そしてきれいに死化粧ができたら、故人と対面してもらいます。自宅で葬儀を行う場合には、いつ弔問客が来ても迎えられるよう部屋を片付けておくなど、準備を整えておきましょう。

◆臨終とは

一般的には呼吸が停止し、脈が取れなくなった心拍停止の時刻が死亡時刻となり、医師から「ご臨終です」と宣告を受けます。死の判定は、この「心停止」を死とするか、脳全体の機能が失われ二度と元に戻らない「脳死」をもって死とするか、臓器提供などを含めた問題で、今広く議論されています。

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1-2-5.病院の場合

病院で亡くなった場合、まず病室で遺体の処理と死化粧が行われ、それから病院の霊安室に搬送されます。ふつう、霊安室には病院の契約葬儀社が待機していて遺体の管理や納棺などを行っています。家族は葬儀社と相談して搬送車を手配し、できるだけ早く自宅や遺体を安置できる場所へ引き取ることになります。

最近では、団地やアパートなど自宅が狭いので、病院の霊安室で通夜から葬儀まで簡単に済ませることもあります。この場合は、病院に申し出て、通夜や葬儀は病院に出入りしている葬儀社に頼むと、一切をとりはからってくれます。

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1-2-6.特殊なケースとして

人の死にはさまざまなケースがあります。大きく分けると

●急に発病して病院に運んでから死亡した場合

●即死の場合
の二種類があります。前者の場合、慢性病が急変して病院に運んでから死亡したとか、交通事故や爆発事故などで病院に運ばれてから死亡したときなどです。この場合普通の病気による自然死という扱いになりますから、医師から死亡診断書をもらって役所で死亡届を提出すると火葬(埋葬)許可証を受けることが出来ます。

ですが、後者の即死の場合、ともかく近所の病院の医師か警察を呼びます。警察医による検死が行われますから、遺族は遺体に触れたり動かしてはいけません。検死を受けてから遺体の処理などにかかりますが、死亡届には死体検案書が必要になります。

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1-2-7.変死・伝染病の場合

病院で死亡した場合でも、、病気の原因が特定できなかったり、病理学的に特異なケースであるとか、また、故人が生前に遺体の解剖を望んでいた場合には解剖が行われます。ですが、必ず遺族の承認も必要になります。たとえ故人が遺言で解剖を希望していたとしても、遺族の許可がないと解剖は出来ません。

特に故人が解剖を希望していた場合は、その意志を尊重して、遺族も解剖に承諾するようにしてあげたいものです。この場合、解剖許可証と死亡届には遺族の印鑑が必要ですが、自宅までの運搬費用は病院が負担してくれますし、病院によっては、花輪代とか線香代の名目で若干の金額が渡されるケースもあります。

死因が不明瞭な変死、自殺、事故死などの場合、警察から行政解剖か司法解剖を要請されます。警察医などによって死因が確認された後、遺体は元どおりの姿に縫合されて帰ってきます。

その死に犯罪が絡んでいると認められた場合は、もちろん遺体の解剖が行われますし、そのほかの場合でも遺族がその死因に疑問を持ったときは、遺族がその費用を負担する形で解剖をしてもらうことも可能です。

法定伝染病で死亡した場合は、市町村の許可なく自宅に連れて帰ることができませんので注意が必要です。霊安室で通夜をすませて、翌日火葬し遺骨を持ち帰って葬儀を行うことになります。

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1-2-8.遺体の搬送について

すでに予定している葬祭業者が決まっている場合には、すぐに連絡して搬送の依頼をします。その際、病理解剖の有無や宗教も伝えておきましょう。

依頼する葬祭業者が決まっていない場合は、遺体搬送を病院に依頼することもできます。多くの場合病院の契約葬儀社が行いますが、頼んだからといって葬儀まで依頼しなくてはならないというわけではありません。遺体を搬送するときは、医師や看護士などの病院関係者も立ち会うことが多いので、あいさつをして病院を後にします。もちろん自家用車で遺体を運んでもかまいません。

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1-2-9.旅先・海外での場合

遠く離れた旅先などで死亡した場合は、病院で近親者だけの通夜をおこなって、現地で荼毘に付すのが一般的ですが、遺体を自宅に運ぶことも可能です。海外から運ぶときは荷物としての扱いになり、棺の中に遺品を入れることはできません。また、遺体に防腐処理加工を施しますが、搬送にあたりこの証明書が必要になります。現地の日本大使館・領事館に死亡の届け出た際に、そのほかの詳細を確認しておきましょう。日本に着いてから改めて遺族の居住地か故人の本籍地の役所に死亡届を出し、火葬許可を受けます。現地で火葬していたら埋葬許可証ををとります。

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1-2-10.事故死などの手続きのとりかた

自宅以外で自殺や事故死をした場合は、宿泊先への弁償や捜索費・損害賠償、あるいは現地で世話になった人への心づけ、荼毘に付すときの費用や遺体を引き取りに行った者の宿泊費など、現金を十分に用意し、印鑑も持参して出かけるようにしましょう。こういった場合、現地で火葬にすることがありますが、警察医の死体検案書をもって、現地の役所に死亡届を二通提出すると、日曜・祝日、執務時間外でも火葬(埋葬)許可証をもらうことができます。通夜や葬儀に関しては、現地の葬儀社に相談するのがいいでしょう。

遺体を自宅に運ぶときは、葬儀社に頼んで防腐処理(主に棺にドライアイスをつめる)をしてもらいます。したい検案書は現住所の役所に提出します。

このような場合、現地でいろいろな手続きやあいさつ回りもありますので、なるべく二人以上で出かけ、手落ちのないようにしましょう。

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1-2-11.葬儀の形式を決める

死亡してからあわただしい時間が続きますが、葬儀の形式をどうするかを決めるのは大切なポイントです。仏教をはじめ、神道、キリスト教、最近増えてきた無宗教葬など、宗教・宗派によって、形式が違います。故人の信仰や希望があればそれに従い、とくに決まった宗教がなければ、生家や嫁ぎ先の宗教で行うことが多いようです。

宗旨・宗派を確認して葬儀の形式を決めたら、死装束や枕飾り、納棺などの具体的な事がらは、葬祭業者に任せるのが一般的になっています。(葬儀社を選ぶ 参照)

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1-3.死亡通知の仕方

1-3-1.死亡連絡のポイント

死亡の知らせの送り方

死亡したことをすぐに知らせる必要があるのは、家族や親族だけではありません。勤務先や学校はもちろん、故人が関係していた会社や団体、友人・知人など生前親しくしていたところには一通り連絡します。特に注意しなくてはならないのは、危篤を知らせた人や危篤時に駆けつけてくれた人です。このような方々には必ず、改めて死去の知らせをしなくてはなりません。

弔事の知らせは、昔は二人一組の使者を立てたものですが、現在は電話や電報が主流になっています。また、一般に弔事の知らせは、連絡を受けた人が必要なところに知らせあうというのがしきたりです。近親者から親類縁者へ、勤め先の人には、総務部や直属の上司が、関係先や社員に知らせます。友人や知人もそれぞれに連絡しあって知らせるのです。

具体的には、深夜や早朝だったら、「夜分遅くにに申し訳ございません」などとと一言添えることも忘れずに。

勤務先や団体などへは、葬儀の日程などが決まってから連絡します。窓口になる担当者に連絡し、後のことはお任せすればいいでしょう。町内会や団地などから、世話役が選出されることになっているなら、なるべく早めに連絡しておきます。

また、菩提寺がある場合は早急に連絡し、葬儀日程などについて相談します。

死亡連絡で伝えるべき内容は、次の通りです。

●死亡日時と要因

●享年

●通夜、葬儀の日程

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1-3-2.電報での通知

たいていの場合は電話で連絡できますが、連絡がつかない場合は電報を利用します。緊急のときに迅速に配達してくれる緊急定文電報が便利です。死亡通知の場合は、「シス」「シス シキュウデンワサレタシ」「シキュウコラレタシ」の定文があり、この前後に二十字まで文章を付け加えることができます。

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1-3-3.はがきで通知する場合

日数に余裕があれば、はがきで通知をする場合もあります。葬儀社にその旨を伝えて、体裁を決めれば印刷から投函まですべてやってくれますので葬儀社に委託するといいでしょう。

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1-3-4.死亡広告を出す場合

故人が社会的に広く知られていたなどの事情で、多くの人に死亡連絡をする必要があるなら、新聞の死亡広告を利用します。

申し込む場合には、新聞社ではなく、まず広告代理店に依頼。葬儀社でも手配を行ってくれます。全国紙・地方紙ともに前日の夕方くらいまでが翌朝の朝刊に間に合わせる限度です。


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1-3-5.献体登録をしていたら

研究のために遺体を病院に提出することを「献体」といいます。(序章参照)故人が登録をしていたら、すみやかにその関係団体に連絡をしましょう。もちろん、遺体として献体をしたくないときは、拒否することもできます。これは臓器を提供する場合も同じです。遺体は葬儀後に献体先に運ばれます。

◆臨時加入電話について
現在の電話の台数では、連絡や問い合わせに対応しきれない場合、臨時電話を設置します。申し込み先は最寄りのNTT営業所で、必要な回線数、設置場所などを伝え、保証金(十万円)を支払います。ほかに取り付け料、レンタル料、基本料金と通常の通話料金が必要です。なお、保証金は返却時に払い戻されます。

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1-4.死装束を着せてから納棺するまで

1-4-1.死装束の着せ方

死化粧の後に着せる死装束は、死出の旅に出るための装束で、葬儀社が用意してくれます。

正式には、次のようにします。

●白木綿に経文を綴った経帷子を左前に着せる

●手足には手甲・脚半をつけ、白足袋とわら草履を履かせる

●三途の川の渡し賃として六文銭を入れた頭陀袋(ずだぶくろ)を首にかける

●手に数珠を持たせ、魔よけの守り刀を遺体の上に、杖をそばに置く。

しかし最近では、故人が愛用していた着物などを左前に着せ、その上に経帷子などの装束をかけるだけにするのが一般的です。また、故人が生前よく身につけていた小物類を持たせる場合には不燃物は避けましょう。

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1-4-2.遺体安置のしかた

死装束を着せたら納棺までの間、座敷などに安置しておきます。寝かせる布団は、清潔で薄手のものがよいと思います。かけ布団は上下逆にしてかけます。

正式には枕はあてないのですが、もし口が開いてしまうようなら、少し高めの枕をあてておきます。

顔には白布をかけ、手を胸あたりで合掌させて数珠をかけ、仏式や神式では「北枕」にして寝かせます(枕直し)。ただし、間取りの問題があるので無理な場合は西枕でもよいことになっています。

浄土真宗以外の宗派では、小刀やナイフなどの刃物を遺体の上に置く風習(守り刀といいます)もあります。この場合、刃先が足のほうを向くように置いてください。

◆エンバーミングとは?

遺体も時間がたてば当然傷みが生じてしまいます。これにより衛生上の問題や処理場の問題などさまざまな問題が生じます。こういった問題を起こさないように遺体に施す衛生保全処理のことをエンバーミングといいます。欧米では古くから行われている遺体処置で、洗浄・消毒・防腐処理(血管の一部を切開して血液を防腐剤と交換する)を行って、化粧をし、衣服を改めます。遺体の状態が悪いときや葬儀まで期間をおくときなどに適した処理で、専用の施設を使って行います。要する時間はだいたい二~三時間位です、費用は十五~二十万円程度。


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1-4-3.枕飾り

遺体の枕元に置いておく飾りが「枕飾り」です。基本道具は「三具足」といって三つ。

●花立て・・・一本樒をさす

●香炉・・・線香を立てる

●燭台・・・ろうそくを立てる

これらを白布をかけた枕机の上に置き、このほかに、鈴と水を入れた茶碗と枕飯(一膳飯)、枕だんご(だんごを皿にのせたもの)を飾ります。

また、線香とろうそくの火は「不断香」といって決して絶やしてはいけないことになっています。

地域や状況によって、さらに枕元に屏風を逆さにした「逆さ屏風」を立てておく風習もありますので、その場合屏風の向きを逆さにして枕元に飾ってください。

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1-4-4.納棺のしかた

枕飾りが終わったら、僧侶を迎えて枕経をあげてもらう「枕づとめ」を行い、遺体を棺に納めます。ですが、最近では枕づとめを通夜の読経のときに行うことが多いようです。

硬直した遺体は動かすことが難しいので、なるべく多くの身内の人が協力して静かに棺に納め、その周りに生花を飾ります。釣竿や愛読書など、故人の生前の趣味の道具があれば、それを入れてあげるのもよいでしょう。ただし、火葬の際に焼け残るものは入れないように注意してください(葬儀社に確認を取るとよいでしょう)。


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1-5.戒名をつけてもらう

1-5-1.戒名とは

戒名とは仏の弟子としての名前で、宗派によっては「法名」(浄土真宗)、「法号」(日蓮宗)ともいいます。本来は仏門に入っている人が生前に与えられるものなのですが、現在では、死者の成仏を願い、通夜が始まる前などに菩提寺の僧侶につけてもらうのが一般化しています。

戒名は院号・院殿号・道号・法号・位号で構成されますが、本来の意味での戒名は法号のみで、ほかは信心深さや社会への貢献度などをあらわすものです。例えば「○○院○○○○信女」とつけられた場合、最初の三文字が院号、次の二文字が道号、その後の二文字が法号で、そのうちの一文字は俗名からとります。最後の位号は性別などによって異なります。


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1-5-2.菩提寺がつける場合

戒名はどのお寺でもつけてもらうことができますが、菩提寺の僧侶につけてもらうのが普通です。それ以外のお寺でいただくと、いざ納骨のときに菩提寺から拒否されてしまうことがあります。そうなってしまうと、改めて戒名をつけ直さなければならないということにもなりかねません。特別な事情がない限り、菩提寺か、納骨・埋葬すると決めているお寺でつけてもらうとよいでしょう。

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1-5-3.俗名のまま葬儀を行う場合

戒名は枕づとめか通夜の読経の後につけてもらうのが普通ですが、俗名のままで葬儀を行うこともあります。菩提寺が遠くて僧侶がこられない、菩提寺がわからない、経済的な事情や本人の希望で戒名をつけないなどのケースがそれにあたります。まずは葬儀社に相談、必要によっては菩提寺の僧侶に確認を取りましょう。

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1-5-4.戒名料の相場

ひとことで戒名料といってもほとんどの場合が読経料も含めた金額で、お布施として僧侶に支払うことが多いようです。

金額にはかなり幅がありますが、たいていの場合が、二十五万円から七十五万円の範囲内。戒名だけのお礼は、下は二十万円以下、上は百万円以上とかなり差があり、平均的な金額を割り出すのは非常に難しいといえます。

戒名料で差が出るのは、戒名の種類によって金額が異なること、宗派や寺院の格・考え方によっても違うことが大きな要因と考えられています。戒名についての知識をきちんと持ち、本当に必要かどうかを考えて選ぶことができれば、多少高くとも納得できる料金といえるでしょう。

◆菩提寺が遠い場合の葬儀

葬儀の読経のすべてを菩提寺の僧侶に頼めれば理想的ですが、諸々の事情により困難な場合もあります。菩提寺が遠い場合は葬儀社に相談して、同じ宗派の僧侶を手配してもらいます。

また枕づとめだけが間に合わないときは、それだけほかのお寺にお願いします。この場合は戒名は菩提寺の僧侶が来るまでつけず、俗名のままで行います。

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1-6.死後必要な法的手続き

1-6-1.死亡診断書

死亡診断書は、死亡を確認した医師に書いてもらい、七日以内に役所に提出しなくてはなりません。死亡診断書の料金は病院によって異なりまので、病院に確認するとよいでしょう(第三章 参照)。

自然死ではない場合(事故死や自殺・他殺等)は、検死官による検死の後、死体検案書が発行されます。不明な点があれば、その前に行政(司法)解剖を要請されることもあります。

なお、死亡診断書の用紙は病院や葬儀社、死体検案書は検死官が用意します。

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1-6-2.死亡届

死亡届は死亡診断書と左右一枚になっているもの。死亡診断書と一緒に同居の親族などの手で提出することが戸籍法で定められています。

ただし、葬儀社や知人などの代行も認められています。遺族は葬儀の準備などであわただしいので、葬儀社などに提出を頼んでおきましょう。

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1-6-3.死体火葬許可証

死亡届を提出する際に、あわせて死体火葬許可証交付申請書が必要です。死体火葬許可証交付申請書を提出して、死体火(埋)葬許可証を交付してもらうことになります。

火葬許可証は、火葬するときに必要となる書類です。火葬場の管理事務所に提出すると日時などを記入してくれます。必要事項を記入してもらうと、これがそのまま埋葬証明書となります。

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1-6-4.遺体解剖承諾書

司法解剖や行政解剖の必要がない場合でも、大学病院などでは死因の解明や研究のための遺体解剖を要請する場合があります。もちろん、たとえ故人が希望していても、故人の配偶者、または両親の承諾が必要で、遺族が断ることは自由です。承諾する場合は、遺体解剖証明書に家族が署名・押印を行ってから解剖することになります。


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2.通夜の形と進め方

2-1.通夜の前にまず決めること

2-1-1.喪主を決める

まず通夜の前に喪主を決めておかなければなりません。喪主は葬儀の主催者であり、遺族の代表として弔問を受けるという大切な立場にあります。 喪主には、配偶者か故人に最も血縁の近い人がなります。また、故人の配偶者がすでに亡くなっていたり高齢であったりする場合は、成人した子ども(一般的に長男)がつとめます。 未婚の子どもが亡くなったならばその親が喪主となります。例えば、一人娘が他家に嫁ぎ、故人の配偶者も亡くなっているといった場合は、娘の配偶者でもかまいません。 また喪主が年少の場合は後見人を立てます。

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2-1-2.世話役と諸係を決める

喪主は遺族を代表して弔問客や僧侶に対応しなければならず、また悲しみのなかにいるわけですから、葬儀のすべてを取りしきるのは実際には無理です。そこで葬儀全体を管理する「世話役」が必要になります。 世話役代表は喪主の事情に通じた親戚や友人、町内会の役員などから選びます。葬儀運営の中心となる重要な役ですから、経験の豊かな人がいいでしょう。葬儀社の人がつとめることもあります。 ほかに弔問客の迎え入れや会場整理などを担当する諸係も必要です。のほか供花・供物、駐車場係などが必要な場合もあります。香典や現金を扱う係は近所の人など信頼のおける人物に任せるようにしましょう。

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2-1-3.葬儀社を選ぶ

葬儀社は大きく分けて葬儀専門業者、冠婚葬祭互助会、農協の葬祭センター、生協の葬祭案内センターの四つ。広告を見て選んだり、病院で紹介された業者に頼むこともあるでしょうが、金銭面などで後々嫌な思いをすることがないようにいくつかのチェックポイントをあげておきます。 ・対応がていねいで話をきちんと聞いてくれる ・説明がていねい ・商品やサービス内容をきちんと説明してくれる ・費用についての説明がきちんとしている ・こちらの予算や希望に応じて見積もりをしてくれる

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2-1-4.見積もりをとる

葬儀費用は葬儀社によってさまざまなので、まずはこちらの予算と希望を告げて見積もりを出してもらいましょう。こうしておくと金銭的トラブルを未然に防げます。どの項目にどんなものが含まれるのかをよく見て検討し、納得した上で決めます。

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2-1-5.式の規模、形、式場、日時などを決める

葬儀の規模は、会葬者の人数や葬儀予算で決まります。形態は仏式か、神式かキリスト教式かなどを決めます。日程はふつう死亡当日に納棺(仮通夜)、翌日の夜に通夜、翌々日に葬儀・告別式としますが、火葬場の都合が最優先です。友引は「死者が友を引く」といわれ、たいていの火葬場が休みになります。

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2-1-6.公営斎場と民営斎条の違い

斎条には大きく分けて公営斎場と民営斎場があります。公営斎場は自治体が運営しているので料金が比較的安くすみますが、通夜の泊まり込みができなことがあります。一方、葬儀社や互助会、寺院が運営する民営斎場は近代的な設備を整えているのが特徴。通夜の泊まり込みも可能なところが多いようです。

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2-2.通夜の前に準備しておくこと

2-2-1.自宅で行う場合

自宅で葬儀を行うときは、まず祭壇を設置する場所と通夜の部屋を決めます。とりあえず駆けつける弔問客もあるので、日程が決まり次第早急に焼香台を置くスペースがなければ、会葬者が出入りしやすい、玄関や縁側に近い場所に置きましょう。 また、僧侶や親族の控え室も別に用意しておきます。たとえ間取りが狭くても、僧侶が着替えをする場所だけは確保するようにしてください。 場所が決まったら家具などを別室に移して片付けます。また通夜・葬儀に必要な用具や什器類も用意しておきます。なければ葬儀社にいえばそれえてくれるので確認しておきましょう。

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2-2-2.遺影写真

遺影写真は故人の顔がはっきり映っているものを選ぶことが大切です。フィルムがあればフィルムを、なければ写真でもOK。葬儀社が葬儀用に大きく引き伸ばしてくれます。

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2-2-3.神棚封じ

神棚がある場合は、死去と同時に扉を閉め、白い紙などを貼って封じておきます。紙を外すのは、神道の忌明けである五十日後。ちなみに仏壇がある場合には、仏式の忌明けである七七日(四十九日)まで扉を閉めておきます。

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2-2-4.祭壇の設営

祭壇の設営は葬儀社が行ってくれますので、遺族は祭壇の段数や形態、生花などの飾り方を決めるだけです。部屋の間取りや料金を考慮し、葬儀社の人と相談して決めるとよいでしょう。最近では、故人のコレクションを飾るなど、個性的な祭壇を望む人が増えています。 香典・菓子折り・果物などの供物は、祭壇には乗せず、左右に白布を掛けた小机の上に並べます。

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2-2-5.外回りの整備

会葬者のために、家の周囲や道路の掃除もやっておきましょう。要所要所に道順札を貼り、玄関にはすだれを下げ(省略することもあります)、忌中札を貼り、通夜の時間を提示します。このとき、葬儀の日時も入れておくと良いでしょう。 玄関はできるだけ明るくし、通夜を営む部屋や控え室・トイレなども張り紙をして弔問客がまごつかないようにします。入り口が暗ければ外灯を用意し、道が悪いときは板を渡したりむしろを敷いたりします。特に雨の夜は、こうした注意が必要です。 基本的にこれらはすべて葬儀社でやってくれます。

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2-2-6.受付・携帯品係などの準備

受付係は、白布を敷いた机を用意して、人目でわかるように「受付」の札を下げておきます。受付台には弔問客の記帳簿と筆記具などをそろえておきます。 受付はなるべく玄関に設けますが、最近は家が狭いなどの事情もあって、祭壇を自宅に飾った場合でも、受付は家の外やアパートの庭などに設けることが多くなってきました。テントは町内会用のものを借りるか、葬儀社に頼めば、テントの他にも机やイス、記帳簿、筆記用具まで用意してくれますので、世話役代表などと早めに打ち合わせして準備しておきましょう。

弔問客が多い場合は、玄関脇や庭先などにテントを張って「携帯品預かり所」の札を下げます。下足札・傘・携帯品を置く棚がないときは、葬儀屋から借りると良いでしょう。

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2-2-7.道路の使用許可証

最近は、弔問や会葬に自家用車で来る人も少なくありません。事前に近くの駐車場を借りておく、又は、空き地や道路を使用する場合、警察に届け出て道路使用許可申請をします。 特に悪天候の日は最寄の駅まで送迎車を差し向ければ喜ばれますが、車での送迎は親類や友人に頼むと良いでしょう。

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2-2-8.供花・供物、花環の並べ方

供花や供物を飾る順番は、血縁の濃い順というのが一般的。続いて贈った人の社会的地位なども考慮し、関係の深い順に、棺に近い所から並べていきます。仏式の場合の供物は線香やろうそく、果物、菓子などがおもになります。

花環は故人と親交が深かった順に玄関に近いほうから外側に向かって並べていくのが一般的です。道路に並べるときは、必ず近所の人にひとこと断りを述べておきましょう。 故人と贈り主の関係がわからないときは、世話役代表などに尋ねるとよいでしょう。

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2-2-9.遺族や近親者の服装

遺族は正式喪服を着用します。ただし通夜の場合、モーニングは昼の服装なので着用しないのがふつうです。喪主と遺族はリボンや喪章をつけます。 また未成年や学生は喪服ではなく、略式喪服か学生服でかまいません。

女性は和服なら無地か縞の着物、洋服なら地味な感じのスーツやワンピースにします。ただし、肩や背中の出る洋服や袖なしの服は黒服でも弔問客に対して失礼です。結婚指輪以外のアクセサリーはすべて外し、薄化粧を心がけます。アイシャドーやマニキュアも避けます。真珠のネックレスで一連のものはOKです。 もし喪服がないときは貸衣装を利用するといいでしょう。洋装・和装ともに豊富なサイズがそろっているので、葬儀社に頼んでください。

注意することは、和装の場合に家紋の確認をすること。また下着や足袋、肌襦袢などを、肌に直接つけるものは買いそろえる必要があります。

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2-2-10.世話役などの服装

世話役代表は遺族と同じように喪服を着用します。ほかの世話役は、ブラックスーツでもかまいませんが、喪家側である目印として喪章はつけておきます。ネクタイ、靴下、靴は黒、ワイシャツは白。アクセサリーは真珠のみです。エプロンをつけていても焼香のときは外すこと。

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2-2-11.喪章のつけ方

喪章およびリボンは原則として親族だけがつけるものです。これらはすべて葬儀社が用意します。また葬儀委員長や世話役、接待係などの人たちも喪家側となるので、喪章をつけて目印とするのが一般的です。通常喪章は左腕に、リボンは左胸につけます。

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2-2-12.数珠の持ち方

喪主や遺族は通夜・葬儀を通じて数珠をもちます。 数珠には一連と二連のものがあり、持ち方が多少異なります。一連の短いものは左手に持ち、両手を合わせて親指と人差し指の間にかけて合掌します。一方、二連のものは左手首にかけておいて、合掌するときに両手中指にかけるようにして持ちます。数珠にもさまざまな種類がありますが、とくに宗派にこだわらないなら、宗派に関係なく使えるものを用意しておくとよいでしょう。

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2-3.通夜の進め方

 

2-3-1.通夜とは

通夜には、神霊が深夜に来臨するのを迎えるという神仏への祈願や祈祷と、もう一つは、遺体を鳥獣から守るために、遺族や親しい人たちが、火をたきながら一夜を明かしたのが通夜の始まりだといわれているように、死者に悪霊がとりつくのを防ぐためという意味があります。 ですから、本来は死者を葬る前に、遺族や近親者・友人・知人など、故人とごく親しかった人たちが集まって故人をしのび、冥福を祈り、最後の別れを惜しみながら、一夜を明かすのです。

通夜とはもともとは「夜通し」の意味で、「夜伽(よとぎ)」ということもあります。 通夜には、死亡当日の夜に遺族や親族だけで行う仮通夜と、一般の弔問客を迎えて行う本通夜があります。本通夜は夜六時ごろから初めて一~三時間ぐらいで終了する(半通夜)のが現在の主流。

仮通夜には、死亡時間が遅く、弔問客を招く準備ができないようなときに行います。 遺族は、弔問客が帰った後、悪霊などの侵入を防ぐため、夜通しで灯明と線香を絶やさないようにして故人につき添います。最近は、火が長くもつうず巻き線香が使われることが多くなっています。

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2-3-2.通夜式の順序

通夜の式が始まる前に、読経の後で短い説教や法話をしてもらうかどうか、打ち合わせをしておきます。僧侶が到着してから行っても良いでしょう。 通夜は、僧侶の読経で始まります。この後、お願いしてあるときは短い説教がありますが、それが終わると焼香します。

焼香の後、別室で通夜の茶菓子や料理をすすめ、故人をしのびます。 なお、通夜が午後7時から9時というような場合、読経は7時から始められるようにしますが、訪問客が多数で焼香に時間がかかりそうな場合はそれより先に近親者だけで通夜式を行う事もあります。

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2-3-3.僧侶の到着

僧侶が到着したらひとまず控え室に案内し、茶と菓子で接待します。喪主と世話役代表があいさつをした後、段取りを説明したり、祭壇などを見てもらったりしておくのもよいでしょう。 まだ戒名をもらっていないときは、白木の位牌を用意しておいて、僧侶に筆で書いてもらいます。戒名をもらうのは葬儀のときでもかまいません。

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2-3-4.通夜の席順と焼香の順番

棺に向かって右側に喪主をはじめとする遺族が座り、左側に世話役代表あるいは葬儀委員長が座り、故人の恩人や先輩、会社の上司や代表者・職場関係・友人・知人など、そして一般弔問客の順に座ります。ただし、スペースがない場合は必ずしも正式な席順にならないこともありますので、臨機応変に座ればよいでしょう。読経中には移動しないのが常識ですが、始まってから着席する場合は、親族でも末席に座ります。

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2-3-5.喪主のあいさつ

僧侶が退場したら行う弔問客への喪主あいさつでは、故人に代わって感謝の気持ちを述べます。このあいさつは、喪主が女性であったり、あいさつが不得意であったりしたときは、親類代表が行うこともあります。 あいさつは簡潔に、多忙中の弔問に対するお礼、香典や霊前、供物などに対するお礼、これで故人も成仏できることなどを心をこめて述べます。

最後に、故人が生前に受けた厚意へのお礼と通夜ぶるまいの宴席への招待を述べてあいさつを終えます。入院中のお見舞いや力添えに対するお礼をこの機会にしておくのもよいでしょう。 なお祭壇室が狭いようなときは、焼香の終わった人からつやぶるまいの部屋に移ってもらい、一同がそろったところで、喪主があいさつしてもかまいません。

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2-3-6.遅れた弔問客を受ける

仕事の都合などで通夜の時間に間に合わない弔問客もいるでしょう。遅れて来た弔問客も記帳してもらい、祭壇に案内して焼香をしてもらいましょう。案内は係の人でも親戚でもかまいません。遺族は通夜ぶるまいが始まっていてもあいさつを。

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2-3-7.手伝いの人たちも焼香する

焼香が終わるころには弔問客も人数が減ってきます。手伝いの人たちも手があいたら席に座ってもらい、残った人たちも交代で焼香をしてもらいましょう。

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2-4.焼香のしかた

2-4-1.焼香とは

焼香は、自らの心身を清め、故人を供養するために行うもので、通夜や葬儀だけでなく、法事の際にも行います。 焼香用の香は、通夜や法事で使う線香、葬儀や告別式で使う抹香(粉香)に分けられ、それぞれ作法が決まっています。また、座って焼香をする座礼と立って焼香する立礼、さらに前の人から香炉が回ってくる回し焼香などのやり方があります。 焼香をする順番は、遺族、近親者(血縁の濃い順)、一般弔問者です。

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2-4-2.宗派による違い

線香の本数や抹香を捧げる本数は、宗派によって異なります。ただし、これはそれほど気にする必要はありません。 線香の場合、真言宗、天台宗は三本の線香を離して立てます。臨済宗では長い線香を一本だけ。浄土真宗では線香を折って横に置きます。 抹香も、一回だけという宗派と三回という宗派がありますが、回数が問題にされることはありません。ていねいに行いたいなら三回、通常は焼香と従香の二回、会葬者が多いときには一回でも十分でしょう。

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2-5.通夜の後の接待では

 

2-5-1.通夜ぶるまい

「通夜ぶるまい」とは、通夜の式が終わったあとに、弔問客を別室に招いて酒食をふるまうこと。弔問客に感謝の気持ちを込めて席を設けます。 通夜ぶるまいは、仮通夜と本通夜をするときは本通夜にしますが、台所係は、故人の交際範囲や死亡通知の発送数などから、およその訪問客の見当をつけておきます。世話役とよく相談し、料理や茶菓子はなるべく数量的に融通がきくものにするとよいでしょう。

本来、通夜ぶるまいの料理は精進料理ですが、最近では寿司やおにぎりなど、手軽に用意できる料理ですますことが増えているようです。 お酒は出さずに済ませる家も多くなっています。通夜でのお酒は、死のけがれを清めるとか寒さをしのぐという意味で、酒を飲むのが目的ではありませんから、列席者に一通り行き渡る程度の量でよいでしょう。

通夜ぶるまいの時間は一時間ほどを目安に。近年、とくに都市部では、焼香が終わった人から順に通夜ぶるまいの席へ案内し、時間をかけずに退席してもらう略式が一般化しています。

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2-5-2.通夜ぶるまいでのあいさつ

一同に集まって通夜ぶるまいをするときは、喪主のあいさつで開会します。忙しいなかを故人のために参列していただいたお礼と、ささやかながら酒肴の用意をした旨を述べます。 閉会のときも、無事に通夜を終えることができたお礼を。

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2-5-3.僧侶へのあいさつ

読経を終えた僧侶を控え室へ案内したら、喪主はお礼のあいさつをし、通夜ぶるまいに誘います。ただし、普段寺院と付き合いがないような家庭では僧侶はすぐ席を立つことが多いようです。僧侶が出席できないときは、翌日の葬儀の時間を確認して、「御膳料」と「御車代」を渡します。

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2-5-4.通夜の切り上げ方

あまり早く通夜を切り上げるのも失礼ですが、遺族や世話役には翌日の葬儀の準備もありますし、弔問客の中には退席するきっかけを待っている人もいます。予定の時刻を30分も過ぎたころには、世話役代表が終わらせていただくというあいさつをすると良いでしょう。

喪主・遺族は、訪問客を玄関まで見送らないしきたりがありますから、たとえ目上や恩義のある人であっても、部屋で目礼する程度でかまいません。 しかし、親類の人が一度に帰ってしまっては、遺族はさびしい思いをしますので、後片付けなどを手伝って順次に退席する心配りも必要です。

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2-5-5.会葬礼状を渡す

会葬礼状は受付や出口で手渡します。すべて葬儀社に依頼すれば準備してくれます。一般的には清めの塩などをセットにすることが多いようです。

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2-6.通夜の後にすること

2-6-1.香典の保管

会計係は通夜の後、香典袋から現金を出して、金額と住所・氏名を香典帳に記帳します。このとき、必ず二人で確かめながら行うように注意すること。金額がピッタリあったら喪主に手渡します。受け取った香典は、喪主がきちんと保管しておきましょう。

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2-6-2.葬儀の打ち合わせ

喪主と世話役代表、葬儀社の人とで翌日の葬儀の進行などについて打ち合わせをしておきます。葬儀の時に係の配置をかえる必要があるかどうかも検討しておきます。そして葬儀の流れをしっかりつかんでおきましょう。打ち合わせがしっかりしていれば、翌日の葬儀はスムーズに進めることができるはずです。 大きな葬儀なら、そのとき世話役代表は、葬儀の進行表を作ると便利です。

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2-6-3.世話係、諸係への心配り

喪主と世話役や諸係、それに通夜の手伝いにきてくれた近所の人たちへのもてなしは、通夜ぶるまいとは別に食事やお酒を用意しておきましょう。 弔問客が帰った後にみんなで食べてもらうか、料理を折り詰めにして持って帰ってもらいます。疲れているので、むしろ持ち帰りのほうが喜ばれるかもしれません。その際に、「心づけ」を渡しておくこともわすれずに。翌日の交通費なども含めて、二千~三千円くらいでいいでしょう。遠方から来てくれた人には、交通費の足が出ないようにする配慮が必要です。

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2-6-4.近親通夜と一般通夜

葬儀が正月松の内にかかるとき、故人が著名人で、後日公葬を行う場合などは、密葬といって身内だけで火葬に付すことがあります。その場合は、近親通夜と一般通夜を分けて行うことがあります。 一般通夜には祭壇に遺骨を飾ってとり行います。

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2-6-5.病院での通夜

自宅から離れた病院で死亡したときなどは、病院の霊安室で通夜を行い、密葬して自宅に帰り、自宅で一般通夜を行うこともあります。

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3.仏式葬儀・告別式の進め方

3-1.事前に確認しておくこと

3-1-1.葬儀と告別式の本来の意味

葬儀は、遺族・近親者や親しかった友人・知人が集まって故人の成仏を祈るために行う儀式です。 それに対して、告別式というのは、一般の知人が故人に別れを告げるための儀式ですので、本来は別々に行うものでしたが、現在は葬儀に続いて告別式を行うため、葬儀と告別式はほとんど同じ意味で使われています。

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3-1-2.進行の確認

葬儀や告別式の進行はすべて葬儀社が取り仕切ってくれますので、喪家側はその指示に従って動くようになります。葬儀・告別式の式次第をしっかりと把握し、式がスムーズに流れるようにしましょう。また、弔辞の人数・所要時間、弔電披露の時間、焼香順位と人数・時間、喪主のあいさつをどこでするか、葬儀と告別式に掛ける時間など、事前に細かく打ち合わせをしておくと良いでしょう。 喪主のあいさつや、弔辞を誰に依頼するか、遺影写真をどれにするかなどは、葬儀社の立ち入れない部分。喪家側のすみやかな対応が必要です。

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3-1-3.司会の役割

司会は、故人と縁の深かった人に頼むか、葬儀社にまかせます。司会は進行係を兼ねることもありますので、その場合は十分な打ち合わせが必要です。会葬者が多いときはマイクなどを用意します。おもに、開閉式の辞や弔辞、弔電の披露を行いますが、司会を立てない葬儀も見られます。

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3-1-4.会場の準備

自宅で葬儀をする場合、会葬者が土足のままで焼香できるように、屋内通路に白布を敷いたり、玄関先や縁側に立式焼香台を準備したりします。雨天の場合は、テントを張ってイスを用意します。これらのことは葬儀社の人がやってくれますので、会場係は点検をします。 会葬者が多いときは回し焼香をするので、香炉盆を用意し、略式会葬礼状を配るとは帰路で手渡す準備をします。

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3-1-5.接待

来賓・僧侶の控え室に茶菓子を用意します。火葬場の控え室で骨上げまでの間に接待することもありますので、その分の茶菓子も用意しておきます。 僧侶係を一人決めておくと良いでしょう。

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3-1-6.受付

白い布をかぶせた机を用意し、受付の表示をします。会葬者気帳簿と供花・供物記帳簿、ペン、名刺受の盆などを用意します。会葬者記帳簿は後で礼状のときに必要なので、住所も忘れずに記入してもらいます。 なお、受付では弔電や供花・供物・香典なども受け付けますので、それらを担当者に回します。 また、受付の近くに携帯品を預かる場所を設けます。「携帯品預かり所」の札を下げ、合札を用意します。葬儀社から預かり棚を借りても良いでしょう。 盗難防止にも気を配りましょう。

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3-1-7.席順を決める

席順は通夜のときと同じく、関係者が前、弔問客が後ろに。式場が狭い場合は、喪主と遺族が祭壇のすぐそばに座っていれば、それで問題ありません。

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3-1-8.供物・供花の順番

これも通夜に準じます。故人との親交の深さ、お世話になった度合いなどで順番を決めるのが一般的。供物や供花は棺に近いところ、花環の場合は玄関に近いところから順に並べます。葬儀が始まってから届いたものは、着いた順に並べます。

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3-1-9.弔電の準備

弔電も次々に届きますが、実際に式の中で読み上げるのは二~三通。どれを読むかは喪主と世話役、進行係らで決め、事前に選んで司会の人に伝えておきましょう。

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3-1-10.弔辞の依頼確認

弔辞をお願いするのは、故人の会社の上司や親しかった友人など。二~三分間で生前の故人の人柄などに触れながら、心に響く弔辞が話せる人を選ぶといいでしょう。

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3-1-11.火葬場に行く人数の確認

絶対に行く人は、遺族と親戚、それに故人と親交が深かった友人など。人選は遺族と世話役がします。人数、出棺の予定時刻が決まったら葬儀社に告げ、タクシーやマイクロバスの手配をします。

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3-1-12.会葬礼状と品物の確認

会葬礼状はハンカチ、酒の小瓶などとセットにして葬儀の終了後に式場の出口で弔問客に渡します。会葬礼状は宛名は書かないで白い封筒に入れて輪角が丁寧な方法です。予定枚数を前もって葬儀社に頼んでおきます。不足しないように多めに準備しておきましょう。

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3-1-13.心づけの用意

霊柩車やマイクロバスの運転手、仮葬場の担当鵜者などの「心づけ」は前もって葬儀社に預けておくと安心です。表には何も書かず、小さな不祝儀袋や白封筒、半紙に包んで用意します。

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3-2.葬儀・告別式の進め方

3-2-1.喪主・遺族の着席

喪主や遺族は開式の時間より早めに入場します。着席する場所は祭壇に向かって右側より、喪主を筆頭にして遺族・近親者・親類の順に着席します。焼香台が立礼用のときは、会葬者に返礼のため、最前列に着席します。

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3-2-2.友人・知人の着席

祭壇に向かって左側に着席するのが世話役や友人・知人です。なお、故人の先輩や恩義のある人、特に親交の深かった友人などには、近親者のそばに着席してもらうこともあります。喪主や遺族と同様に開式の時間より早めに着席しましょう。

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3-2-3.僧侶の入場

僧侶は定刻に入場します。祭壇前まで誘導してくるのは進行係。喪主以下参加者全員が着席したことを確認してから誘導します。 式場が椅子席の場合は、一同起立で迎えますが、そうでなければ座ったまま黙礼して迎えます。

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3-2-4.開式の辞

司会者の「ただいまより故○○殿の葬儀ならびに告別式をとり行います」というような開式のあいさつで葬儀は開始します。社葬などでは「ただいまから○○株式会社社長、故○○殿の社葬を・・・」というように肩書き・敬称をつけますが、個人葬ではつけません。 このひとことで参列者一同は姿勢を正して葬儀に臨みます。

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3-2-5.読経

葬儀の規模や会葬者の数によって異なりますが、読経はだいたい二十~三十分くらいです。 椅子席でなく、参列者が正座をしている場合は、長時間になると足が痛くなるので、あまり長引かないように、事前に僧侶と相談することもできます。

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3-2-6.当時拝受

司会者が「ただいまより弔辞をとうだいいたします」とあいさつした後、一~三本くらいの弔辞を読みあげます。弔辞を読む人を紹介するときは「○○殿」とするのが一般的ですが、「様」でも問題ありません。弔辞が終わるたびに、進行係は礼を述べます。 また参列者の多くが身内といった、小規模な葬儀では弔辞は省いてもかまいません。

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3-2-7.弔電の紹介

弔電は、故人とつながりのあった方からいただくもの。いただいたすべてを紹介するのが礼儀ではありますが、時間の都合から、司会者が弔電紹介のあいさつをした後、三通くらいの文面を読み上げ、「ほかに○○通頂戴しておりますが、時間の関係で省略させて頂きます」と挨拶することが多いようです。その場合でも、送ってくれた人全員の名前だけは紹介したいものです。

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3-2-8.焼香

焼香の順番焼香はまず僧侶が行い、それが終わったら司会者が「ただいまより焼香に移ります」とあいさつをして、参列者の焼香に移ります。まず最初に行うのは喪主。続いて血縁の濃い順に焼香していきます。親族が終わったら世話役や友人・知人などに移ります。式場が狭いときや参列者が多いときは、香と香炉を盆に乗せて、回し焼香を行うことがあります。

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3-2-9.閉式の辞

全員の焼香が終わり僧侶が退席したら、司会者の「これをもちまして故○○殿の葬儀を終了いたします」という閉式の辞で、葬儀は終わります。大きな葬儀では、このとき喪主が会葬者にお礼のあいさつを述べる場合もあります。 この後、休憩(約十分程度)を挟む場合は、遺族、会葬者も一度退席し控え室へと移動します。休憩を挟まず引き続き告別式へと移る場合は、僧侶の退場はなく、司会者の葬儀閉式の辞に続いて、告別式の開式となります。

いずれにしても、一般会葬者のために中央を空けるように座りなおします。それまで祭壇に向かっていた喪主と遺族は、告別式の会葬者のほうに向いて座ります。 自宅葬の場合は、玄関口が履物などで混雑しますので、最近では祭壇に面した縁側や廊下に焼香台が設けられ、履物を脱がずに焼香できるような設営も多くなっています。

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3-2-10.告別式の開式、僧侶入場

「ただいまより告別式をとりおこないます」という司会者のあいさつで開式します。僧侶が入場し、読経が始まります。

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3-2-11.一般焼香

僧侶の読経が始まったら、一般の会葬者が焼香を行います。会場によっては、進行係は会葬者を案内します。遺族や親族は参列者が焼香を終えたら、座ったままで返礼をします。

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3-2-12.僧侶の退場、閉式の辞

会葬者の焼香が終わると、僧侶は読経を終了し、退場します。このとき喪主や会葬者一同は頭を下げてお送りします。その後、司会者の「これをもちまして故○○殿の告別式を終了いたします。長時間にわたり誠にありがとうございました」という閉辞により告別式は終了します。

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3-2-13.自宅で簡単に行う場合

自宅で葬儀を行う場合、葬儀と告別式を区別しないで、一緒に行うこともあります。 このときは、特別に開始のあいさつがあるわけではなく、僧侶が到着し、読経が始まると、喪主・遺族・近親者・参列者の順に焼香し、香炉が僧侶の前に回ったとき式が終了するという形です。

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4.新しい葬儀の形

4-1.葬儀に対する新たな考え方

 

4-1-1.無宗教葬儀とは

日本の葬儀形式は、宗派によるものがほとんど。しかし最近では、より自分らしい形で生に別れを告げたいという考えが増えてきています。 そこで注目を集めているのが宗教的な儀式を省いた「無宗教葬儀」です。

「無宗教葬儀」といっても宗教を持たない人の葬儀という意味ではありません。あくまでも、宗派にとらわれない葬儀のことで、特に決まった式次第はなく、自由な発想で行う、いわば「お別れ会」と称するような葬儀形式です。従来の葬儀に比べ「故人の人柄をより偲ぶことができる」「無駄な費用を省くことができる」という利点があります。

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4-1-2.注意すべき点

葬儀に対する考え方が比較的オープンになってきているとはいえ、やっぱり昔ながらのしきたりを重んじる人が大部分。故人の意思や遺族の考えで「無宗教葬儀」を執り行う場合でも、参列者に対する配慮が必要です。無宗教葬儀の旨を記した看板を会場に掲げるなど、あらかじめ準備をしておきましょう。

また、本人が生前に自筆でカードなどを作成し、葬儀の当日参列者に配布するというのもいいアイデアです。

◆自筆カード文例

例1

私のお葬式にお越しいただきありがとうございます。 ○年の私の人生を花にたとえれば たんぽぽのように質素なものだったように思います。 ただ風に吹かれても雨に打たれても毎年小さな花を 咲かせることができたことを喜びにも思います。 最後に私のわがままで、葬儀をごくひそやかな 「お別れ会」という形にさせていただきたいと思います。 この小さな花を支えてくださった方々に これ以上負担をかけたくなかったためです。 そろそろお別れのときでございます。 お世話になった皆様へ心を込めてお礼申し上げます。

例2 (事前に密葬を済ませている場合)

この手紙をお読みいただいているころ、 私は第二の人生に旅立っております。 皆様にはいろいろとお世話になっておきながら、 お葬式はほんの身内だけの密葬にいたしました。 家族にはこれ以上迷惑をかけたくなかったという 私のわがままをどうぞお許しください。 今までの幸せな日々をすごせたこと、 皆様のおかげと感謝いたします。 ありがとうございました。

◆密葬とは?

遺族にとって訃報の悲しみがまだ癒えないなか、葬儀をとり行うのは大きな負担です。そこで最近では、ごく身近な人だけでひっそりと死者を送る葬儀形式「密葬」が増えています。

密葬のメリットとしては、遺族の精神的・経済的な負担が減ること。しかし一方で、訃報を知って駆けつけてくれた人にお引取り願ったり、故人と関係のあった人に後日、事情を説明しなければならなかったりと問題点もあります。 これらの点を考慮し、生前に密葬の旨、自筆で手紙を作成しておくケースも。また、故人を葬るのは密葬にし、遺族が落ち着いたころに改めてホテルやレストランで「お別れ会」「故人を偲ぶ会」を行う方法もあります。

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5.無宗教葬儀のいろいろ

5-1.映像・パネル葬

5-1-1.演出の準備

映像やパネルを用いて葬儀を行う場合、事前の準備が必要です。青年時代の写真や、故人の人柄がよく出ているような写真などをパネルやスライドにしておきます。これらを会場に展示することによって、参列者に故人の思い出を気軽に話し合ってもらいたいという意図です。 また、故人の歩んできた世代をあらわすような歌謡曲や当時の世相を反映しているビデオをバックに流すことなども、故人への思い出をより偲ばせるような演出です。

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5-1-2.式次第

●遺族・参列者入場 BGMに故人が好きだった曲を流すというのも一案

●開式の辞 パネル、映像などをもとに故人の思い出を語り合っていただきたい旨をひとこと添えます。 例「故○○の思い出を、展示させている写真や、後ほどご覧いただく映像で偲んでいただければ、故人もさぞ喜んでくれることと存じます」

●黙祷 約一分間の黙祷

●映像で故人の略歴紹介 故人の生涯を振り返るのに適した写真を数点選び、スクリーンに映しながら解説します。また、本人がその生涯をまとめたビデオを生前に製作しておき、それを流す方法も。

●弔辞拝受・弔電紹介 通常の葬儀と同様の手順で

●献花 参列者に献花していただいている間、スクリーンに故人の在りし日の姿を。

●喪主あいさつ

●閉式の辞 最後にいま一度、このような葬儀になったことを、お礼の言葉とともに添えておく心配りを。 例「皆様方のご協力により、故人の希望通りの式を行えましたこと、改めて御礼申し上げます」

◆変化する争議についての意識 東京都、神奈川県が行った調査で、葬儀について、新しい考え方が増えつつあることがわかります。

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5-2.香りと音楽の葬儀

5-2-1.優雅に故人を送る

葬儀というと、とにかくしめっぽい雰囲気になりがちです。そこで、ほのかな香りに包まれながら美しい音楽で演出する、そんなロマンあふれるセレモニーもいいのではないでしょうか。 専門の楽団に、故人が好んだ音楽などを演奏してもらいます。特に好んでいた曲がない場合は、華やかななかにも厳粛な雰囲気を醸し出すような選曲を。クラシック音楽などの上品な調べが最適です。 また、献花の変わりに、故人が愛用していた香水を使い、「献香」を行います。愛用の香水がない場合は花の香りなど、すっきりしたものを。

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5-2-2.式次第

●遺族・参列者入場 楽団の演奏をBGMに。

●開式の辞 従来の葬式とは少し異なる旨をひとこと添えます。

例「音楽を愛した、故人の人柄を偲ぶ意味からも、音楽と香りに包まれながらの葬儀とさせていただきます。」

●前奏 故人の歩んできた世代を代表するフォークソングや懐かしの童謡などでもよいでしょう。

●黙祷 約一分間の黙祷

●献奏 故人の選んだ曲や、旅立つ人を送るのにふさわしい曲を。

●弔辞拝受・弔電紹介

●喪主あいさつ 通常の葬儀と同様の手順で。

●献香 ガラススティックの先端に香水をつけ、飾られている花に振りかけていきます。

●閉式の辞 最後にいま一度、このような葬儀になったことを、お礼の言葉とともに添えておく心配りを。

◆無宗教葬儀と生前予約 生きているうちに自分の葬儀プランを立てられる生前予約(序章参照)。独自の発想で自分の葬儀を行いたいという人には、便利なシステムです。本人自らが会場や演出、式の段取りなどこと細かに決められるので、自分らしい葬儀が行えます。 また、本人が亡くなった後にこれらの葬儀企画が変更されたことは、過去にほとんどありません。

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5-3.自然葬

5-3-1.散骨は違法?

遺骨を海や山に還す自然葬。「散骨」とも称されるこの方法、日本では最近まで、法律で禁止されていると思われていました。 しかし、散骨は古代から行われていたこと。庶民の遺体は、山や海などの自然に還すことが普通だったのです。 近年では、市民団体「葬送の自由をすすめる会」が一九九一年に散骨を行って以来、注目を集め始めています。承諾を得た場所で節度を持って行えば、法に触れることはありません。

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5-3-2.実際に行う場合

散骨は「葬送の自由のすすめる会」がボランティアで行っているほか、最近では大手の葬祭業者でも受け付けているところもあります。 実際に行うときは環境面を考えて遺骨はできるだけ細かく砕き花を捧げるときも花びらだけで。お墓をもっているという場合には、遺骨の半分を散骨し、残りの半分を墓に入れるという方法もあります。

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5-3-3.ポイント

葬儀を行う場合は、事前にすませてから改めて自然葬の式を行うとよいでしょう。海での式を例にすると、所要時間は一時間くらいが目安。また、「故人を偲ぶ会」を行うなら、参列者への心配りから、船上ではなく、場所を変えて行います。

◆宇宙葬の時代到来!! 科学の進歩によって、宇宙は少しずつ身近な存在になってきています。そんななか、自分の遺骨を衛星ロケットで宇宙へと送る“宇宙葬”が話題を呼んでいます。 アメリカのセレスティス社が始めたこのサービス、日本では一九九七年から受付を開始。また、葬儀費用の一部は宇宙飛行士の育成などの基金として使われます。宇宙へのロマンを死後に実現するという新しい葬儀スタイルです。

★どのようにして行われる? この「宇宙葬Earthiew」サービスでは、専用カプセルに遺骨の一部を納め、衛星ロケットに取り付けます。カプセルの側面には日本語五十字以内のメッセージを刻印。年一~二回の予定日に打ち上げられるのです。

★申し込みは・・・ 本人が生前に契約、もしくは遺族が本人の死後、契約することもできます。本人の生前契約の場合は、遺族に再度、契約の確認がされます。 ・打ち上げ費用/百万円(一九九九年現在) ・問い合わせ先/日本総代理店セキセー(株)

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6.個性的な葬儀のための工夫

6-1.無宗教葬儀の会場例

6-1-1.ホテルで葬儀を行う

宗教色をなくし、自由な発想で葬儀を行うのなら、会場の選択も重要なポイント。そこで最近、葬儀会場として注目を集めつつあるホテルを利用してみてはいかがでしょうか。必要以上にしめっぽくならず、華やかな雰囲気が演出できるのも大きな魅力です。

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6-1-2.ホテル葬のメリット

長所をいくつかあげると

●パーティ形式など、開放的な雰囲気で葬儀が行える。

●サービスがゆきとどいているので、参列者に対して細やかなもてなしができる。

●交通の便が良い

●設備が充実しているので、いろいろな式プランが組める。

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6-1-3.注意すべき点

葬儀を行う際、多くのホテルでは制約事項を定めています。

例えば・・・

●遺体の搬入禁止

●強い香りや煙の禁止

●木魚、読経の禁止

●会場前の花輪の設置禁止

など。

また、「葬儀」ではなく「お別れ会」「偲ぶ会」などの名目にしてほしい、といった要望もあるようです。

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6-2.個性的な祭壇を使って

6-2-1.花祭壇が人気

無宗教形式の葬儀の場合、当然、祭壇にも制約はありません。極端な話、祭壇を用いなくてもかまわないのです。 一般的には花をデザインした祭壇が人気です。もちろん使う花にも制約がないので、故人の人柄を表すような花を選びたいもの。陽気な性格だった場合はヒマワリ、清楚な人柄だった場合はスミレなど。故人が特別好んでいた花で祭壇を埋めつくしてあげるのもいいでしょう。

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6-2-2.より個性を表現

祭壇の代わりに、棺の周りを個性的に飾り付けるというのもいいのではないでしょうか。 例えば、故人の描いた絵を並べたり、愛用のクラブとともに小さなゴルフ場を模しての棺の周りをデザインしたり・・・。 日ごろ好んで着ていた洋服や着物などを回周りに飾るというのも、参列者に故人をより思い起こしてもらえるような演出方法です。

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7.出棺から火葬までの進め方

7-1.出棺

 

7-1-1.最後の対面

告別式が終わると出棺ですが、出棺の前に遺族や近親者は最後のお別れをします。このとき、故人と特に親しかった友人などからの申し出があれば参加していただきましょう。 祭壇から棺を下ろしてふたを開け、故人と対面します。この後くぎ打ちを行いますので、故人の全身の姿が見られるのはこれが最後になります。

対面の後、故人の周囲を飾るように棺の中に花を入れます。これを「別れ花」といいます。このとき、故人の愛用品なども棺の中へ。ただし金属やガラス製のもの(時計など)は燃えないので避けます。

◆棺の種類 棺は大きく分けて三つの種類があります。

天然木棺 ・ ・ ・檜や樅などを使った高価な棺。重量が五十キロくらいある高級品です。

フラッシュ棺 ・ ・ ・最もよく使われる棺。プリント合板は安価ですが、人気があるのは桐棺です。

布張棺 ・ ・ ・フラッシュ棺に布を張った棺。ビロードを張ったものも。

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7-1-2.くぎ打ち

別れの花の後に行うのが、くぎ打ちです。くぎは遺族から順に二回打ち付けます。死者が無事に三途の川を渡って冥土にいけるように、という願いから三途の川原の石を意味するこぶし大の石を使って行います。あくまで儀式的なものなので、力を入れすぎる必要はありません。故人の冥福を祈り、心を込めて打ちましょう。全員が打ったら葬儀社がくぎを完全に打ち付けてふたを固定します。 なおキリスト教では、くぎ打ちの儀式はありません。

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7-1-3.出棺

くぎ打ちの後、棺を五~六人の遺族や近親者、親しい友人の男性の手で、足の方を先にして霊柩車まで運びます。喪主は位牌を持ち先頭へ。次いで遺族の代表が遺影を持って続き、棺を先導します。 この後、遺族の代表が、会葬者にあいさつをします。葬儀終了時に挨拶をしていれば省くこともあります。火葬場まで行く人たちは、それぞれ指示された車に乗って、霊柩車の後に続きます。

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7-1-4.葬儀後、出棺のあいさつ

会葬のお礼と、故人への生前の厚誼の感謝、遺族に対する今後の支援のお願いなどを簡単に述べます。 遺族は位牌と遺影を会葬者のほうに向けて持ち、挨拶を終えたら一礼をします。

あいさつの例:

「本日はご多用中のところ、故○○○○の告別式にご会葬いただき、誠にありがとうございました。○○○○も、さぞ喜んでいると存じます。 故人が生前賜りましたご厚誼に深く感謝するとともに、私ども残された遺族に対しましてもかわらぬご厚誼をいただけますようお願い申し上げます。 皆様、本日は本当にありがとうございました。」

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7-1-4.出棺後の後始末

火葬場まで同行するのは、遺族と近親者、故人と特に親しかった友人などです。また、遺骨は自宅へ戻ってきますので、自宅に残って遺骨を迎える準備をする人が数名必要です。このころには、会葬者もほぼ帰っていますが、遅れて弔問に訪れる人もいるでしょうから、喪家の事情をよく知っている人にお願いします。 主な仕事は、葬儀社が祭壇を取り払った後の片付け、後飾りの祭壇の設営や、お清めの準備などです。

お清めとは、火葬場から帰ってくる人のための、清めの塩や手洗いの水など。留守を預かる数名は葬儀社の指示に従い、こまごまとした用事をすませていきます。 また、会計係は香典の整理をし、氏名・住所・金額を確認、記録します。請求書・領収書なども整理して、お金の精算もやっておきましょう。このほか、会計の収支記録や会葬者名簿、香典帳などをそろえ、遺族に事務の引き継ぎができるよう準備を整えておきます。

◆野辺送り 最近では故人を霊柩車で火葬場に送ることを「野辺送り」とするところがほとんど。しかし本来は埋葬する墓地まで葬列を組んで死者を送ることをいい、今でもこの風習が残っているところがあります。死者の霊が戻ってこないように庭先で棺を回したり墓地まで行くのに道を迂回したり ・ ・ ・とさまざまです。

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7-1-5.火葬場への行き方

霊柩車を先頭に、喪主と遺族は火葬場へ向かいます。霊柩車に乗るのは運転手と葬儀社の人だけです。喪主は位牌を、遺族は遺影を持って、霊柩車に続く車に乗ります。 また、火葬場へ向かう人数はあらかじめ計算して車の手配をしますが、故人の友人や趣味の仲間などが急に同行を申し出る場合があります。故人との最後のお別れですので、ぜひ同行していただきましょう。その際、車に乗れないのでお断りするなどということのないように、対処できる準備をしておくことも大切です。

そして、忘れてならない持ち物が「死体火葬許可証」。ほとんどの場合葬儀社が預かって管理し、手続きしてくれます。 また、霊柩車や、ハイヤーの運転手、火葬場の係員などには、その場で故人の供養のため、ということで心づけを渡すことが多いもの(受け取らない場合も)。小さな寸志袋か白封筒などに入れて準備し、世話役の人に渡しておきましょう。

◆日本は火葬の国 日本の場合、どんな宗教であっても死者を火葬にすることがほとんど。しかし、ヨーロッパなどカトリック教徒が多い国では、日本ほど火葬は多くありません。かつて、日本でも土葬が一般的な時代もありましたが、第二次世界大戦後、生活の近代化が徐々に定着して、全国的に火葬が行われるようになりました。

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7-2.火葬場で

 

7-2-1.納めの式(斂祭)

火葬場に着くと、棺は霊柩車から降ろされて火葬炉の前に置かれます。ここで故人との最後のお別れをするのが「納めの式」で「斂祭(れんさい)」ともいいます。 棺の前には小机に位牌、遺影、ろうそく立て、香炉などを飾り、僧侶が読経を行います。読経が始まると、葬儀のときと同様に、喪主から順番に焼香を行います。あるいは、葬儀社の指示にしたがって、焼香だけですませることもあります。 とくに火葬場が混んでいる場合は、時間的な余裕がないので、すみやかに焼香を済ませることになります。

かまどの前に棺を安置していた場合は、合掌して見送りますが、別の場所にかまどがある場合は、僧侶と喪主を含めた二~三人の親族だけが付き添い、残りの人たちは控え室に向かいます。 なお火葬許可証は、葬儀社の人が管理事務所に提出して手続きを行い、火葬が終わると日付が書き込まれて、埋葬許可証になります。この書類は埋葬時に必要になるので大切に保管しましょう。 ただし、火葬後書類を受け取るまでの手続きや管理はすべて葬儀社でやってくれるので、保管が必要になるのは自宅に帰ってからになります。

控え室では
火葬場のかまどの種類によりますが、火葬に要する時間は四十分~一時間くらいです。この時間、遺族、友人、知人という順に。遺族は、世話役が用意したお酒や茶葉で参列者をもてなします。また、僧侶に今後の法要のことを相談しておくのもよいでしょう。 控え室がある火葬場では、隣の部屋でも他家の人たちが同じように待っています。ここでは、迷惑にならないように静かに過ごすのがマナーです。また残った菓子類は持ち帰らないのが習わしです。火葬が終わったら、葬儀社の人が呼びに来るか、放送で連絡してくれます。

◆現代火葬事情 ひと昔前、石炭やマキ、重油を使っていたころは、火葬時間が今の倍かかり、煙や臭いなどによる火葬公害が各地で問題になったものでした。 しかし、現在では各地の火葬場でガス式の近代的な設備が整えられ、無煙、無臭、無塵で行われるようになると、こうした問題もなくなりました。

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7-2-2.骨上げ

火葬がすんだお骨は、骨上げ台の上に鉄板にのせられて出てきます。その後、遺族たちの手によって骨壷に納められますが、これを骨上げといいます。竹の箸を使って、二人一組でお骨の一片を同時につかんで拾い上げ、一、二片を骨壷へ納めたら次の人へと箸を回していきます。これには、「橋渡し」に通じる意があるとされ、故人が無事に「三途の川」を渡れるように、という願いが込められているといいます。 拾う順番は、喪主から始まって、故人と血縁の濃い順に。火葬場の職員が指示してくれるので、それに従えばいいでしょう。

お骨は、足のほうから体の上部へ向かって拾っていきます。こうして骨壷に入れていけば、生きていたときのように立った姿でお骨が納まります。 通常、のど仏だけは最後に一番つながりの深い人が拾いますが、骨上げの仕方も地域によってさまざまで、のど仏だけしか拾わないという地方もあります。

骨壷に納めなかったお骨は、火葬場が供養してくれますので、おまかせしましょう。

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7-2-3.分骨する場合

分骨は、もともと釈迦の遺骨を仏弟子たちが分けて祀ったことからくるものです。 遺骨を、宗派の本山や遠方の郷里のお墓、婚家だけでなく生家のお墓にも納めたい場合などには分骨します。分骨用のお骨は火葬場の係員が拾い上げてくれます。あらかじめ葬儀社にその旨を伝えておけば、分骨用の骨壷や錦袋を用意してもらえるので、それにお骨を納めて持ち帰ります。

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7-2-4.心づけを残す

火葬場の係員には心づけを渡すのが一般的です。小さな寸志袋や白封筒に入れて渡しますが、葬儀社が渡してすませることが多いようです。また公営の火葬場では心づけを禁止しているところもあるので、その場合には無理に渡す必要はありません。

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7-2-5.埋葬許可証は大切に

火葬許可証を管理事務所に提出すると、骨上げが終わったときに係員が埋葬許可証を渡してくれます。たいていの場合は、白い布に包んでから覆いをかけて手渡されますが、この箱の中に埋葬許可証を入れてくることが多いようです。遺族は骨箱に入れたまま埋葬するときまで大切に保管するようにしましょう。紛失すると、埋葬できません。

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7-2-6.帰宅する

骨上げが終わったら、喪主は遺骨を抱きかかえ、位牌と遺影は遺族が持って車で帰ります。車に乗るのは来たときと同じ順番で喪主の乗った車が先頭になります。 ただし、帰る道は火葬場に来る時とは違う道を通らなければいけない、という地方も多く見られます。

◆骨壷いろいろ 骨壷はたいてい火葬場で購入しますが、シンプルなデザインでどれも同じ。そこで自分らしい骨壷を生前から用意する人もいます。慣れ親しんだ土地の焼き物や陶芸の趣味を生かしてオリジナル骨壷を作っておくのです。全国の有名窯場の骨壷専門店もあります。これからは個性あふれる骨壷を求める人が増えるかもしれません。

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8.帰宅してから

8-1.仏の帰宅

8-1-1.後飾り

葬儀の当日に埋葬してしまう場合を除いて、遺骨は自宅へ帰ってきます。 後節りは小祭壇の上に遺影、花、線香、供物、燭台などを置き、火葬場から遺骨と位牌が看いたらこの上に安置します。後節りの祭壇は二段か三段が普通で、小机や箱などに白い布をかけて作ります。(最近では葬儀会社で祭壇を用意します。)また、仏壇がある時は仏壇の前に、ない時は適当な部屋の北か西に置くのがしきたりです。 後節りの祭壇には忌明けまで毎日灯明をともし、焼香して故人の冥福を祈ります。また、後日訪れる弔問客にも、ここで礼拝してもらうようにするとよいでしょう。

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8-1-2.お清め

火葬場から戻ってきた遺族たち一同は、手洗いと塩で身を清めます。この手洗いの水と塩は、喪家の人が準備し、お清めを手伝います。

お清めの仕方

1.火葬場に行かなかった人にひしゃくで水をかけてもらい、手を洗う(省略する場合も)

2.塩をひとつかみ、胸と肩のあたりにかけてもらう(足もとにかける場合も)塩は、会葬礼状に付いている場合もあります。

最近では手洗いを省略したり、喪服をいためるおそれがあることから、直接体に塩を振りかけずに玄関先に塩をまいておき、それを分でお清めとすることも多いようです。

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8-1-3.遺骨迎え

後飾りの祭壇に、遺骨、位牌、遺影を安置して、灯明をともし、線香をあげて、僧侶にお経をあげてもらいます。これを「還骨回向」といい、一同は線香で焼香します。 最近では、この還骨回向と初七日の法要を兼ねる場合も多く見られます。

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8-1-4.初七日

故人が亡くなった日から数えて七日目が初七日で、死後初めて行われる法要となります。 祭壇に、遺影と遺骨をかざり、遺族、近親者、友人、知人が参列して僧侶にお経を上げてもらいます。そのあとで、茶菓や精進料理の接待をします。 初七日は、正式には亡くなった日を入れて七日ですが、最近では、葬儀当日にされる方が増えています。

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8-1-5.精進落とし

精進落としはもともと四十九日忌の忌明けに行うもので、この日から肉や野菜を使った通常の料理を食べ始めることからきたならわしです。しかし、それほどこだわらなくなっている現在では、精進落としは供養と葬儀の当日、僧侶や世話役などの労をねぎらう意味合いの席となっています。 会食の前に喪主はお礼のあいさつを述べ、末席について、関係者の席を回って接待します。残った料理は折り詰めにして持ち帰ってもらいましょう。

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8-1-6.精進落としの席でのあいさつ

精進落としの宴は1~2時間後位に喪主はころあいを見計らって簡単なお礼のあいさつをしてなるべく早く切り上げます。内容は、出席した人々へのお礼とお開きとする旨のほか、今後の法要や納骨などの予定が決まっていたらそれを伝えます。

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8-1-7.僧侶への御膳料

僧侶には最上席に座ってもらいますが、席に着かない場合には「御膳料」を包みます。折り詰めにした料理といっしょに渡すといいでしょう。

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9.葬儀が終わったら

9-1.後片付け

9-1-1.家の中を片付ける

精進落としが終わったら、喪主や遺族は、世話役や友人・知人、親戚の人たちにあいさつをします。自宅のこまごましいところの後片付けは、後からゆっくりすればいいでしょう。後日弔問する人もいるので、後飾りの祭壇のある部屋はしばらくそのままにしておきます。 また葬儀社や近所、町内会から借りた喪服、食器類、座布団などは、破損や紛失がないか確認して、できるだけ早く返すようにしましょう。

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9-1-2.家の外を片付ける

自宅で葬儀を行った場合、道路に置かせてもらった花環や生花、道案内の札、看板などはすべて取り除きます。 又、隣近所の人には花環を置かせてもらったり、車や人の出入り等なにかと迷惑をかけているものです。「このたびは、いろいろとご迷惑をおかけしました。お蔭さまでとどこおりなく葬儀を済ませることができました。」などとあいさつしておきます。 自宅の庭など近所に迷惑がかからないようなところは、後日落ち着いてから掃除すればいいでしょう。

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9-1-3.世話役から事務の引き継ぎ

精進落としが終了し、僧侶や親戚など列席者一同が帰途についたら、お手伝いや近親者が宴席のあとを片付けている間に、各世話役から葬儀事務の引き継ぎを行います。

引き継ぎは、香典、会葬者名簿、弔辞弔電、供物供花控え帳、現金出納帳、領収書など、現金や関連書類を喪主が担当者から直接受け取り、間違いがないか確認します。また、世話役やお手伝いの人など喪家以外の人が現金を立て替えていたらそれを清算します。

葬儀にかかるお金は、遺産相続がある場合、相続税の控除の対象となります。会計係にはどんな小さい出金や入金でも、もらさず出納帳に書いておいてもらいましょう。葬儀社への支払いのほか、通夜ぶるまい、精進落としの次第料理や酒、火葬場へ移動する際のタクシー代なども控除の対象です。 引き継ぎをするときは、お金に関するものは必ずその場で確認しておき、後で金額が合わなくてトラブルとなることのない様気をつけましょう。

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9-1-4.あいさつ回り

葬儀の数日後、喪家は関係者や会社関係などに挨拶回りに行きます。 昔は服喪と言い、喪家は一定期間喪に服し、喪家以外の人とは話すことも禁じられていました。したがって挨拶回りも忌明け後に行っていました。 最近は、葬儀後数日内に挨拶回りに出る喪家がほとんどです。 先方の都合もありますので出向く前には、必ず先方に連絡をしておきます。

挨拶回りに行くのは、僧侶、世話役代表、近親者、隣近所、恩師、会社の上司などです。相手が遠方だったり、時間的に無理なようでしたら、品物にお礼の手紙を添えて送ります。 服装は正式には喪服ですが、最近は準喪服か地味な平服で出向く人が多いようです。平服のとき男性は黒ネクタイをつけるのがマナーです。

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9-1-5.勤務先へのあいさつ

故人が会社員だった場合の勤務先にも会葬のお礼にまわります。先方の勤務の邪魔にならないように、出向く前に電話で先方の都合を確認します。直属の上司をはじめ、葬儀の際お世話になった人達に挨拶します。この時、故人の私物などを整理して持ち帰るようにします。

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9-1-6.僧侶へのお礼

僧侶へのお礼を、御布施と言います。葬儀の場合、御布施は、枕経、通夜、葬儀、告別式など全てのお礼をまとめて包みます。 葬儀翌日に喪主と親族代表が寺に赴き、お礼を述べ御布施を差し上げます。 最近では葬儀当日に渡すこともありますが、この場合でもできれば翌日にでもお寺へ赴きお礼を述べた方が丁寧です。御布施を差し上げる時は、菓子折りなどにのせて渡します。この時に法要の日時などの相談もします。 御布施は市販の不祝儀袋に入れて渡します。

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9-1-7.葬儀社への支払い

葬儀後数日して、葬儀社から請求書が送られてきます。見積もりをした後に追加のレンタル用具などが必要となる事が多いので、請求金額は、当初の見積もりより若干多くなっています。内容をよくチェックして、不明な点は遠慮無く問い合わせることが必要です。もし葬儀で担当者に大変お世話になったのなら、「心づけ」を手渡すこともあります。金額は五千円から一万円くらいが一般的です。

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9-1-8.その他の支払い

通夜ぶるまいや精進落としの宴席の仕出しや酒などは、通常後払いになっています。会計係から引き継ぎのときに、請求書の確認や、一部を誰かが立て替えてないかなどを確認します。 いずれにしても支払いは早めにすましましょう。 世話役や葬儀委員長を務めてくれた人には、翌日か翌々日にはお礼を持ってあいさつに伺っておきましょう。服装はやはり正式か略式の喪服で。

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9-1-9.お悔やみへの礼状

会葬できないで供花や弔電を送ってくれた方には、忘れずにお礼状を出しておきましょう。

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10.一段落ついてから

1-1.遺品の整理と形見分け

10-1-1.遺品の整理

葬儀が終わり、遺族の生活が一応落ち着いたら、遺品の整理をします。勤め先の書類などが出てきたら、どうしたらよいか元の上司などに相談しましょう。故人が自営業だった場合は、確定申告などの問題があるので書類は五年間は保存が必要です。

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10-1-2.形見分け

形見分けとは、故人が愛用していた身の回り品や大切にしていた物を、故人の思い出の品として遺族や親しい人たちにわけることです。ふつう衣類や本、アクセサリー、万年筆などです。形見分けをする時期は、特に決まりはありませんが、普通三十五日か四十九日の法要の際に行うことが多いようです。 またしきたりとして故人より目上の人には贈らないことになっていますので注意しましょう。しかし先方から希望があったり、故人の遺志があった場合はかまいません。

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10-2.香典返し

10-2-1.香典返し

忌明け後、香典返しを行います。忌明けとは死去してから49日目を指しますが、香典返しの準備はその前から行います。会葬者名簿や供物供花控え帳により、香典返しのリストを作成します。誰にどんな品物を送るか決めていきます。 香典返しは通例「半返し」を標準に考えます。香典の金額が1万円の人はその半額である5000円を香典返しの目安とします。

香典返しの各金額が決まったら、デパートなどで商品を決めます。よく使われる品物はタオル、シーツ、石鹸、お茶、砂糖などの実用的なものです。 品物には白い和紙を掛け、黒白の水引きで結び、「志」または「忌明け」と書きます。関西では「満中陰志」「忌明志」などと書きます。

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10-2-2.あいさつ状

香典返しには四十九日の忌明けの知らせを兼ねることが多いので、あいさつ状を添えて送ります。葬儀社やデパートには何種類かの決まった文面があるので、それを申し込めば品物といっしょに発送してくれて便利です。正式には、奉書紙に薄墨で左のような文面を書いたものを送ります。

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10-2-3.香典返しをしない場合

一家の主人が亡くなった場合など、経済的理由で香典返しを省略することもできます。その旨を忌明けのあいさつ状にしるすといいでしょう。

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10-2-4.寄付するときは

近年では、故人が生前社会にお世話になったことへの感謝の心を表す意味で施設や研究機関・救済団体、または卒業校などに寄付することもあります。寄付先の団体から礼状をもらったら、そのコピーをあいさつ状に同封して香典をくださった人に送ります。

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10-3.納骨

遠方からきている近親者のために火葬後すぐ埋骨したり、近親者が帰らないうちに早めに済ませる事もありますが納骨は仏式なら初七日から四十九日までの七日目ごとの法要のうち、四十九日が最も多いようです。

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10-3-1.一時預かり

墓地をまだ購入していないなどの理由で、長期間納骨できないこともあるでしょう。こんな場合は菩提寺・私営霊園や公営墓地の事務所に申し込んで、納骨堂に仮納めしておきます。 なお、納骨堂へは墓へ埋骨するまで一時的に預ける場合と永代納骨として納骨堂に納める場合があり、最近は永代納骨する家も多くなってきています。

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10-3-2.納骨式

納骨式は遺族、親族、ごく親しい友人・知人と僧侶とで行います。まずは納骨法要を行いその後お墓へ移って、遺族代表がお骨を納めます。花やろうそく、線香を供え用意しておいた卒塔婆を立てます。僧侶にお経をあげてもらい、参列者が順番に焼香を行います。墓石がまだない場合は白木の墓標をたてます。

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10-3-3.埋葬許可証

墓地に埋骨したり納骨堂に納めるときには必ず埋葬許可証が必要です。埋骨・納骨が済むと寺や墓地の管理人が預かるのが普通ですが、遺族が管理するときは墓地の移転には必要になるので大切に保存しておきます。

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10-3-4.分骨する場合

火葬前に骨壷を二つ用意し火葬場で分骨するのがいちばん良いですが、分骨を納骨の際に行う場合は僧侶に頼んで分骨してもらいましょう。自宅等で勝手に分骨しないのが故人への礼儀です。

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10-3-5.永代供養

永代供養墓とはお墓の承継者がいなくても、寺院や霊園が永代にわたる供養・管理を約束してくれるお墓のことで、生前に申込ができます。広い納骨室に共同で骨壷を安置して使用する合葬式や、最初から遺骨を骨壷から出して土に還す合祀式や、一部を容器に入れて納め、残りを合祀する分骨式などがあります。単体用や二体用、すでに亡くなった故人の改葬ができるところ、供養の方法や年限、墓誌の形態などさまざまですので内容を十分確認してから決めましょう。

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11.生命保険など書類の手続き

11-1.生命保険

 

11-1-1.受け取るには

故人が生命保険に加入してたら、保険金の請求手続きを行います。生命保険には一般的な保険会社のものと、郵便局の「簡易保険」、勤務先で入る「団体生命保険」などがあります。 連絡するのは、故人が契約者なら保険金の受取人、故人が契約者でないときは契約者が行います。その際、故人の氏名と死因、死亡年月日、保険証書番号などを伝えます。保険会社から書類を取り寄せ、所定事項を記入して必要書類を添えて申請します。 手続きは死亡後、原則三年以内に。書類の受理から一週間前後で保険金が支払われます。

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11-1-2.受け取れない場合

保険金が受け取れないのは

●保険金受取人または保険契約者が故意に被保険者を死亡させたとき

●契約後一年(会社によっては二年)以内に被保険者が自殺したとき

●犯罪または死刑執行で被保険者が死亡したとき

などです。

また、団体生命保険では受取先が会社になっていることもあるので注意が必要です。

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11-1-3.税金

生命保険には相続税がかかります。ただし、法定相続人一人について一定額までは非課税になり残りの金額が課税の対象になります。

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11-2.遺族年金など

 

11-2-1.厚生年金の場合

故人が厚生年金保険に加入していた場合、その収入に頼っていた遺族に基本年金額の1/2の遺族年金が支給されます。子供がいる場合はそれに加給年金額が加算されます。 この手続きは故人の勤務先の事業所を管轄する社会保険事務所で扱っています。故人が退職後、老齢年金や障害年金を受けているときは住所地の社会保険事務所(都道府県の保険課に問い合わせれば教えてくれます)で行います。 なお、死亡後五年間手続きをしないで放置すると無効になります。

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11-2-2.国民年金の場合

国民年金の受給者は原則として被保険者です。ただし、その被保険者が生計中心者でその遺族が国民年金に入っているときは、次のような年金や一時金が受けられます。

●母子年金(子供が十八歳未満で母親が養育しているとき)

●準母子年金(十八歳未満の弟妹を養育している姉や祖母に)

●遺族年金(年金に入っていた父母が死亡した場合十八歳未満の子供に)

●寡婦年金(夫が六十五歳未満で老齢年金を受けられる条件を満たしている場合妻が年金に加入していなくてもその妻は六十~六十五歳の間受給される)

●死亡一時金(三年以上保険をかけていた場合その遺族に ただし、二つ以上の年金受給権が生じたときは(例えば寡婦年金と死亡一時金など)どちらか一つを選んで年金を受けられます。 詳しくは市区町村役場の国民年金窓口へ。

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11-2-3.埋葬料の支給

社会保険(健康保険組合や共済組合)の加入者が在職中、もしは退職後三ヶ月以内に亡くなった場合埋葬した人に埋葬料が支給されます。 支給額については、被保険者の資格喪失の際の標準報酬月額に相当する額(10万円に満たない時は10万円)が支給されます。埋葬費については、埋葬料の額の限度で、実際に埋葬に要した費用が支給されます。 埋葬料または埋葬費の支給を受けようとする者は「埋葬料支給請求書」または「埋葬費支給請求書」に死亡が確認できる書類(死亡診断書等)を添えて請求します。(埋葬費の場合は埋葬に要した費用に関する証拠書類を提出しなければなりません。

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11-3.名義変更

11-3-1.名義変更について

故人の名義になっている所有物の名義変更は大変な手間がかかります。しかし、後々めんどうなことが起こらないようにきちんと手続きを終えておきましょう。手続きを怠ると、悪用されたり知らぬ間に会費が預金講座から引き落とされたりする恐れがあります。

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11-3-2.預貯金

被相続人の名義である預貯金は一部の相続人が預金を勝手に引き出すことを防止するために、被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると預金の支払いが凍結をされます。凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なりますので事前に確認が必要です。

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11-3-3.電話

故人の名義になっている電話の場合、ふつう遺族がそのまま引き継ぐことになりまが、電話会社によって手続きが異なりますので、契約されている電話会社に直接問い合わせましょう。 もし故人に未払い分の電話料金があったら、これも引き継いで支払います。

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11-3-4.その他の公共料金

公共料金というのは、電話のほかにも電気、水道、ガスなどいろいろあります。これらの支払い名義は通常世帯主になっていることがほとんどです。 料金が自動引き落としの場合書類の提出が必要なので銀行などの金融機関で口座振替の解約と新規依頼の手続きをとります。書類提出が不要な場合もあるので、まずは各支払い先に問い合わせてみましょう。

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11-3-5.賃貸住宅

故人が世帯主である賃貸住宅に住んでいたら、契約の名義変更をしなければなりません。手続きを怠ると、たとえ家賃を払っていても不法居住とみなされることがあります。

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11-3-6.自動車

所有していた人が亡くなってから十五日以内に手続きを行ってください。 細かい手続きに関しては陸運局に直接問い合わせましょう。

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11-3-7.クレジットカード

後々悪用される恐れもあるので、クレジットカードの持ち主が亡くなったら、カード会社に電話をして退会届を送ってもらい、所定の事項を記入の上カードとともに返送しましょう。ただし、未払い分は返済する義務があります。

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11-3-8.株式債券

株式の名義変更は被相続人名義の株式が上場株式か非上場株式かによって手続きが異なります。 上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので証券会社と相続する株式を発行した株式会社の両方で手続をすることになります。 この場合取引市場がないので、それぞれ会社によって行う手続きが変わります。発行した株式会社に直接問い合わせましょう。

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11-3-9.ゴルフ会員権

会員の死亡とともに権利が消滅するゴルフ会員権もあり、その場合には相続することができません。 そうでない場合は名義を変更する必要がでてきますが、ゴルフ場に直接問い合わせて、どのように手続きをしていけばいいのか聞いてみましょう。

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11-3-10.死亡退職届

会社に確認の上速やかに提出しておきましょう。

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11-3-11.その他

このはかに不動産、特許や商標、意匠権なども名義変更の手続きが必要です。

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11-4.遺産相続について

 

11-4-1.相続のしくみ

相続人とは、法律上相続権のある人のことです。誰が相続人になるのかは、法律で定められています。具体的には、民法という法律の中の相続編というところで定められています。よく、相続関係の法律をまとめて「相続法」と呼んだりしますが、相続法という法律があるわけではありません。ちなみに、現在の法律では相続に関して、男女による差や、長男だから特別扱い、というようなことはありません。

昔は家督相続(かとくそうぞく)と言って例えば長男が優先的に相続をすることができましたが、今はありませんのでご注意を。

まず、亡くなった人(被相続人といいます)に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。 配偶者が相続人になるのに加えて、以下の人も相続人になります。 (配偶者がいない場合は、以下の人だけが相続人になります。) ?子がいる場合は、子。 ?子がいない場合は、被相続人の父母(父母が他界している時は祖父母)。 ?被相続人の子も父母・祖父母もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹。

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11-4-2.法定相続

遺言がない場合、民法は誰が相続人となるのかを規定していますが、さらに各相続人が受け継げる相続分につていも規定しています。これを『法定相続分(ほうていそうぞくぶん)』といいます。

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11-4-3.遺留分

遺言書を作成すれば、法定相続人以外の者に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では遺産の一定割合の取得を相続人に保証する『遺留分(いりゅうぶん)』という制度が規定されています。

相続人の遺留分を侵害する遺言も、当然に無効となるわけではありません。遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり、『自己の遺留分の範囲まで財産の返還の請求する遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせきゅう)』がなされるまでは、有効な遺言として効力を有します。 しかし、遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求権を行使すると、受遺者・受贈者は、侵害している遺留分の額の財産を相続人に返還しなければならず、返還する額をめぐって訴訟になるケースも多く見られます。

ですから、遺産をめぐる争いを防ぐ意味でも、相続人の遺留分を考慮したうえで遺言書を作成したほうがよいでしょう。

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11-4-4.相続税

相続税は、原則として不動産、動産にかかわらず故人の残した財産すべてにかかります。生命保険や退職金なども相続財産とみなされますが、相続人一人につき五百万円の控除が認められています。 また葬儀費用(法要は除く)、故人が生前に購入した墓地、墓石、仏壇などには相続税はかかりません。

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12.法要について

12-1.法要を営む

 

12-1-1.法要とは

「法要」とは、身内や親しかった知人などが集まって故人の冥福を祈る行事のことです。追善供養とも呼ばれます。仏教では、人が死ぬと七日ごとに七回、閻魔に生前の行いを裁かれることになっていて、その裁判の日が忌日ということになり、判決が言い渡される四十九日目が忌明けです。法要には故人の功徳が報われて、極楽へ行けるようにと祈る意味があります。 忌明けまでの忌日は、初七日、二七日、三七日 ・ ・ ・ ・ ・ ・七七日と続き、本来であれば忌日ごとに菩提寺の僧侶を招いて読経してもらうのですが、最近では、初七日と七七日以外の法要は内輪だけで済ませるのが一般的になっています。

また死んだ翌年の命日からは一周忌、三回忌 ・ ・ ・と年忌法要が続きます。この際少し注意が必要です。これは、法要の日取りは、死亡日を一日目と考える場合とその前日を一日目と考える場合があるからなので、事前に菩提寺の僧侶によく確認しておきましょう。

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12-1-2.法要の段取り

初七日法要は、たいてい火葬場から帰宅後、還骨回向に続いて行います。また七七日法要では、位碑に「入魂供養」で魂を入れてもらい、仏壇に納めます。法要の前には、僧侶と招く人たちに連絡し、法要後の会食の準備をしておきましょう。

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12-1-3.服装は

一周忌までは略式喪服にします。和装なら地味な色無地の着物に黒の帯。洋装ならブラックスーツで。それ以降は黒地などの地味な服装でいいでしょう。

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12-1-4.法要後の接待

接待を行う場合は、喪主のあいさつの後、用意した料理、酒などを招いた人たちにふるまいます。僧侶を交えて故人の生前の話などをしながら、なごやかな宴に。ホテルやレストランなどで行ってもよいでしょう。たとえ接待をしない場合でも、仕出し屋に折り詰めを頼んで、仏の供養ですからと持ち帰ってもらうようにします。

僧侶への謝礼(お布施)は、葬儀のときと同じように、不祝儀袋に入れて渡します。金額は葬儀のときよりは少なくなりますが、わからなければ葬儀社に聞いても教えてくれますので参考にするといいでしょう。

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12-1-5.一周忌以降は

僧侶を頼んで読経してもらってもいいし、内輪だけでひっそりと供養してもいいでしょう。毎年の命日(祥月命日)や毎月の命日(月忌)も同様です。

◆喪中・喪服期間について 亡くなった後、哀しみのために身を慎む期間を”服”、喪に服することを”忌”と呼び、喪服を着て家に引きこもっている間のことをさします。明治七年太政官が布告した、親族の忌服期間を示す「忌服令」では夫が死んだら三十日が?忌?とされました。現在は忌服は死亡して直後の期間を意味し、配偶者なら十日が目安です。 喪中とは、喪に服している間は、結婚式や祝賀会などの祝い事への参加をつつしみ、年賀状、正月飾り、初詣といった新年の行事も控えるのが一般的です。但し最近では、不幸が起きる前に決まっていた慶事であれば喪中であっても出席し、百か日をすぎれば身内の祝い事を行ってもよいとされる傾向があります。

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12-2.初盆・お彼岸

12-2-1.初盆とは

お盆の?盆?とは、梵語(サンスクリット語)の?ウランバナ?を漢字にした?盂蘭盆?の最後の一字を取ったものです。これは苦しんでいる先祖の霊を慰めて、よりよい世界に送るための行事で、初盆は死後初めて迎える盆のことを指します。 もともとお盆の供養は、七月十五日を中心に行われていたのですが、明治時代に新暦が採用されてからは、一ヵ月遅らせて八月十三日~十六日の間に行うことが主流になりました。お盆は一年に一度、その家のすべての先祖をあの世から迎えてもてなすものです。一般的には十三日に迎え火をたき、各家庭では精霊棚と呼ばれる先祖を迎える場所を作り、僧侶を招いて棚経と呼ぶ読経をしてもらいます。 しかし最近では精霊棚を設けずに、仏壇の中にお飾りやお供えをするやり方が増えてきました。お供えするのは、ナスをさいの目に刻んで洗米といっしょに入れた?水の子?、蓮の葉に数滴の水をたらした?閼迦水?、ナスときゅうりで作った牛と馬(先祖の乗り物)、ほかに季節の野菜や果物、仏壇の左右には盆提灯や行灯を飾ります。 ◆盆踊り 盆踊りの由来は、平安時代に空也上人がすすめたといわれる“踊躍念仏”が始まりです。それを鎌倉時代の一遍上人が受け継いで念仏踊りとなり、全国に広まったといわれています。念仏を唱え、鐘や太鼓を鳴らして踊り、この世に帰ってくる先祖の霊を鎮めるために行いましたが、今では夏の風物詩、娯楽的な行事になっています。

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12-2-2.お彼岸とは

「彼岸」とは?悟りの世界?を意味します。私たちの住む?此岸?から彼岸の間には煩悩(迷い)の力が働く河があり、そこを渡るには六派羅蜜という修行を毎日しなくてはなりません。しかし、毎日修行することは大変なので、春と秋の二回、一週間ずつだけ修行することになったのがお彼岸の始まりです。彼岸の入り(春は三月十八日ごろ、秋は九月二十日ごろ。年によって異なる場合があります)は仏壇をきれいに整え、季節の花や果物、故人の好物などを供えます。彼岸だんごやおはぎなどを供えることもあります。そして七日間のお彼岸の期間中は、毎日仏壇に線香をあげてお参りします。お墓参りも家族そろって出かけましょう。彼岸の中日か、その前後に行き、墓石を磨いたり、墓の周りの草取りや掃除をした後、花と線香、供物を供えて合掌します。また卒塔婆を供えてもいいでしょう。卒塔婆は僧侶に書いてもらい、起塔するときは塔婆料を払います。 ◆喪中のお中元、お歳暮などは? お中元は、中国から伝わりました。中国では、1月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元といい、神に供え物をして身の汚れを清めました。この風習が日本に伝わり、これが仏教の盂蘭盆会(盆)と結びついて日本中で広まり、祖先の霊を祭り、供え物を親類縁者、隣近所に配る習慣ができました。現在行われている「お中元」の形が定着しはじめたのは明治30年代といわれ、1年の上半期の区切りの意味で、6月下旬から8月上旬までの間に、日頃お世話になっている方々に贈り物をするようになりました。 お歳暮は、お正月に祖霊(先祖の霊)を迎え、御魂祭りの御供え物や贈り物をした日本古来の習わしが、起源とされています。嫁いだり、分家した人が親元へお正月になると集まり御供え物を持ち寄ったのが始まりです。今では、日ごろお世話になっている方々への年末のあいさつになっています。日ごろお世話になっている方々へ一年間お世話になったことに対するお礼と、来年もなお一層のおつきあいを願う気持ちを込めて贈ります。 お年玉は、もともとお年玉は丸いもちのことでした。昔の人は人間のたましいは丸い形をしていると考えていました。また、もちは毎日食べることで活力を与えてくれる米から作られるため「人の命そのものである」とも思われました。 昔は米を「トシ」とも言ったので、丸いもちを「トシダマ」と呼んだのです。年の始めに家の中心となる人がトシダマを家族の人に分け与えるという習わしがありましたが、やがて現在のように、子どもにこづかいを与える習慣になったのです。 以上のような由来もあり、たとえ喪中であっても、お中元やお歳暮は贈ったり、いただいたりしてもかまいません。ただし、喪中なので、水引きは紅白ではなく、地味な目立たない色のリボン飾りなどにするのが無難だと思います。お年玉も由来にあるように、本来は祝うためのものではないのではと思います。しかし、お正月自体が身内の新年のお祝い事のようなものになっているので、「お年玉」という表書きは避け、「文房具代」「書籍代」として渡すようにするといいでしょう。

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13.お墓と仏壇

13-1.お墓を建てる

13-1-1.お墓を買うということ

そもそも日本で家単位の墓が建てられるようになったのは、明治末期以降といわれます。それまでは土葬が中心だったので「個人墓」がほとんどでした。ところが、戦後「家」から「核家族」単位となり、墓の事情も変わりつつあるというのが現状です。 お墓を建てる時は、きちんとした認識を持って行う必要があります。よく「墓を買う」という表現を用いますが、一般的に物や不動産を購入することとは違うということが重要です。墓を買うというのは「墓の使用権を取得する」こと。この使用権は死んだ人ではなく、生きている人が取得するので、子がいない場合などは無縁になります。つまり家の承継者によって墓も承継されるものなのです。 P120グラフ参照:自分の墓について

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13-1-2.永代使用

上記のように、墓を買うといってもその土地の所有権が手に入るのではありません。墓としてその土地を使用する権利が与えられただけです。「永代使用(子孫や家が続く限り使い続けること。またはその権利)」というのを、永久使用(時間の果てがなくいつまでも使い続けること。またはその権利)と勘違いする人がいますが、墓を祀る人がいる限り使う権利があるということです。そのためほとんどの墓地では毎年管理料の支払を行うことになっていて、ある程度の期間、未納になると墓を守る人がいないと判断されて、使用権を取り消されてしまうことがあります。

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13-1-3.お墓を建てる時期

お墓を建てる時期にとくに決まりはありません。資金や場所などの都合がつき次第、建てればよいでしょう。一般には七七日、百ヵ日、一周忌、三回忌、初盆、彼岸などの法要のときがよいと考えられています。

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13-1-4.お墓を建てない場合

埋葬は七七日までに行うべきというのが本来の考え方ですが、実際にはお墓の購入が間に合わないこともあります。そこで、一般的にお寺や霊園の納骨堂で遺骨を預かってもらう「仮納骨(一時預かり)」が一般的に行われています。また墓地は手に入れたけれど墓石がまだ、という場合は、白木の墓標を建てて、とりあえず遺骨を納めておくこともあります。ところが現在、とくに都市部では、墓地不足により一時的に納骨堂に預けるのではなく、そこをお墓に決めてしまうというケース(永代納骨)が急増。納骨堂はほとんどがロッカー形式になっています。また、インターネットでお参りできるお寺もあり、話題を呼んでいます。 ◆埋葬法とは 墓地はどこにでも造れるわけではありません。それを定めたのが「墓地、埋葬等に関する法律」(一九四八年施行)です。埋葬=死体を土中に葬ること、火葬=死体を葬るためにこれを焼くこと ・ ・ ・というように、墓地埋葬に関わる事がらの定義づけがされ、墓地を造るには都道府県知事の認可が必要であることが明記されています。

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13-1-5.公営と民営、寺院墓地の違い

都道府県や市町村などの自治体が運営するのが公営墓地、財団法人などが運営するのが民営墓地。民営墓地のなかで、宗教法人が運営するのが寺院墓地です。 公営墓地の利点は何といっても安さ。もちろん自治体ごとに違いはありますが、民営墓地や寺院墓地よりも安いのがふつうです。さらに宗旨・宗派を問わず申し込めるという特徴もあります。しかしその分、競争率も高く、応募する際にも、墓地のある自治体に住所があることなど、さまざまな条件があります。一方、民営墓地は、やはり宗旨・宗派を問わず誰でも申し込め、比較的手に入りやすい点が魅力といえるでしょう。環境もよく、霊園内でのお墓の位置も自由に選べます。ただし、公営に比べて料金が数倍も高いことが難点です。 寺院墓地は、檀家になるか同じ宗派でないと使用できないのが原則ですが、最近は宗派が異なっても受け入れるお寺が増えてきました。寺院墓地の利点はお寺のそばにお墓があるため法要がお寺でできることなどでしょう。料金には幅があり、一概にはいえませんが、やはり公営墓地よりは高くなるようです。 ◆ペットの墓 ペットがなくなった場合は、ペット専門霊園(合同葬なら一万円程度~)か、自治体で火葬にする(東京都の場合、二十キログラム未満の動物で二千六百円)ことがほとんど。もちろん公共の場所以外で自分の家の敷地内なら埋めてもかまいません。霊園によってはペットの専用墓地や納骨堂、動物供養塔などをもうけているところもあります。

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13-1-5.墓地を選ぶ条件

墓地は、自分だけでなく、これからの承継者が守っていくものなので、安易に決めるのは考えものです。墓参りに行きやすい場所や環境か、駐車場や休憩室などの施設はどうか、掃除などの管理はどうなるのかなど、実際に現地に足を運んで確かめてから、納得できる場所を選びましょう。 1.立地、環境 墓地の環境を見るポイントとしては、東南向きで、日当たり、風通し、水はけがよいことなどがあげられます。新設の墓地の場合は、静かで眺めがよいなどといった環境だけでなく、山あいであれば地盤の強さなどにも注意します。 また、市街地から遠く離れた場所にあるような場合は、自宅から墓地までの所要時間や交通の便などをしっかり調べておきましょう。 2.設備 墓地が郊外にある場合、車での墓参がほとんどでしょう。当日満車であわてることのないよう、駐車場の収容力は必ず確認しておくこと。また、休憩所、法事用の施設の有無、掃除道具や手桶が借りられるか、線香や生花の売店があるかもチェックしておきましょう。 3.管理 管理面でのポイントは墓地の掃除や見回りがどうなっているかということ。掃除がよく行き届き、芝生もきちんと手入れされていると、気持ちよく墓参りできます。

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13-1-6.お墓のしくみ

お墓は、次のような工程で造られます。 1.区画の基礎工事を行う 2.遺骨を納めるカロート(納骨宝)を造る 3.外柵を造る 4.墓石を設置する 5.祭具や付属品を設置する しかし、実際には1~3まではすんでいて、依頼者が関わるのは墓石などの発注からというケースが多いようです。 カロートとは、墓石の下に作られる納骨宝のことです。通常、何代にも渡って納められるよう、五~六個の骨壷が置ける広さをもっています。水がたまらないような工夫がされているか確認しておきましょう。 外柵とは、お墓の周りを囲む柵のことです。普通は角型の石で組まれており、門柱や植え込みスペースがあるものもあります。ただし、形や材質を決めている霊園もあるので注意しましょう。 墓石は、お墓の中心となるもので、一般的な角柱塔型(和型)のほかに、横長の形の 「洋型 」、 「和洋折衷型 」などがあります。 祭具の基本的な組み合わせは、花立て、香炉、水鉢、塔婆立てです。ふつう渇きを癒す為の水鉢を中心に据えます。花立ては石に穴を開けたものより、ステンレスやプラスチックの脱着式のほうが掃除しやすく、冬場に中の水が凍って石が割れるなどということもありません。また、墓石の周りに墓誌や灯篭などの付属品を飾ることもあります。 ◆お墓もオリジナルで 墓石のスタンダードはいわゆる 「和型 」ですが、最近では個人の趣味や職業をモチーフにしたデザイン性に富んだものが見られるようになっています。似顔絵や愛読書、趣味の機関車 ・ ・ ・などがオブジェのようにデザインされたものがあり、霊園の中でひときわ目を引きます。死後の住まいもオリジナルデザインでという人におすすめします。生前に吟味しておくのもよいでしょう。

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13-1-7.墓石選び

墓石は、お墓の中心になるものなので、決める時は形や大きさ、材質などをよく調べてから注文するようにしましょう。選び方によって価格にも大きな差が出てきます。

しかし、石の価値などは素人にはよくわからないことが多いので、信頼できる石材店で相談するのがやはり一番いいと思います。石材店の人に実物を見せてもらうといいでしょう。

1.形

前述した和型、洋型、和洋折衷型のほかに、駒型、幅広型、角柱型、五輪塔、神道型など、さまざまな形があります。オリジナルデザインの墓石を造る場合には、安定性について専門家の意見をなるべく聞くようにしましょう。

また、オリジナルデザインの墓石を認めない霊園もあるので、事前に確認しておきましょう。

2.大きさ

墓石の大きさは尺貫法(一尺=約三十センチメートル)で計測するのが基準。八寸角といえば、竿石(和型の墓石の最上段に乗っている石)の縦×横が八寸角であることを表わします。大きさに決まりがあるわけではありませんが、墓地面積とのバランスを考えて決めるとよいでしょう。大きさを決める目安としては、三平方メートルの墓地には八寸角、四平方メートルだと九寸角の墓石くらいがいいでしょう。

3.材質

最も多く使われているのが御影石(花崗岩)。そのほかみも安山岩、はんれい岩、閃緑岩が代表的。重厚で風化に強く、光沢があることが大切です。

葬儀を行った際墓をもっていたか

いろいろなお墓

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13-1-8.開眼供養について

「開眼供養 」とは、もともとは仏像に目を入れる時に行う儀式ですが、いつしかお墓や位牌に魂を入れる儀式のことも開眼供養と呼ぶようになりました。その意味で 「入魂式 」または 「お魂入れ 」とも呼ばれます。

やり方は、普通の埋葬(納骨)の時と同じです。墓前にお供えをして、僧侶にお経をあげてもらい、その間に参列者が焼香を行います。

開眼供養は墓を建てたときに行うものですが現在では納骨の際や、お彼岸や新盆、年忌法要などに合わせて行うことが多いようです。後者の場合には、まず故人の法要を行い、その後に開眼供養を行います。

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13-1-9.お墓参りについて

お墓参りは基本的にはいつしてもかまいません。ただし年回忌や月の命日、春と秋のお彼岸、お正月などには、特別な事情が無い限り行うようにしたいものです。お墓参りでは、花立ての水を変えて新鮮な花を生け、供物を供え、焼香して合掌・拝みます。供養する前に墓石を磨いたり、周辺の草をむしったり、お墓をていねいに掃除することも忘れないようにしましょう。

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13-1-10.卒塔婆供養

卒塔婆は塔婆ともいいます。卒塔婆には角柱塔婆、経木塔婆、板塔婆がありますが、一般に塔婆といえば板塔婆のこと。先端に宇宙を生成する五つの要素、空、風、火、水、地をシンボル化した宝珠、半月、三角、円、方が刻み込まれ、五重塔のような形をしています。その板塔婆の表に、五つの要素を梵語で示した文字、その下に故人の戒名を記してお墓の塔婆立てに起塔するのが卒塔婆供養です。前もって、文字は僧侶に書いてもらい、お布施とは別にお礼を渡します。この儀式は年回忌やお彼岸などにしますが、決まった時期はありません。

◆墓地の現状

最近では墓地の様相も変わりつつあります。例えば欧米でよく見られる芝生墓地(都立八王子霊園など)や墓地の周辺を樹木で囲み、敷地内に色とりどりの草花を植えた公園墓地、さらには、薄い墓石を壁状に一列に並べた壁墓地なども見られるようになりました。都立霊園でも多摩にはロッカー式、小平には合葬式墓地があります。

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13-1-11.改葬する場合

「改葬 」とは、現在埋葬されている場所から別の場所に移すことをいいます。どんなときに改葬するかというと、遠くに転居してその地に永住すると決めている、あるいは、地方から都会へ出てきてお墓の世話が思うようにできない、しかも郷里に世話を頼める人もいないなどの事情にでお墓を自宅の近くに移したいといったケースです。

1.改宗

寺院墓地のほとんどは入壇することが使用の条件です。したがって代々仏教徒だったが、家族全員キリスト教に改宗したなどという場合、改宗・改葬が必要になります。

2.住居移転

転勤などで住所が変わってもお墓はそのままでかまいません。ただし管理料の支払いやお墓参りは必ず行いましょう。転居先があまりにも遠方で、変わりにお墓の管理をしてくれる人もいないような場合には、改葬を考えておいた方がいいでしょう。

3.墓地移転

区画整理などで墓地全体が移転するというケースです。通常、墓地の管理者が使用者の許可を得て、改葬の手続きや代わりの墓地の用意を行ってくれます。ただし、これはまれなケースなので管理者から何らかの説明があるはずです。

4.承継者なし

承継者がいなくなると、墓地の使用権は自動的に消滅します。この場合、遺骨は親族のお墓に移すか、無縁墓地で合祀します。

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13-1-12.改葬の手続き

墓地の管理者や菩提寺の住職の許可を得たら、改葬を行うための手続きをします。

まず、役所から 「改葬許可申請書 」を入手して必要事項を記入し、埋葬の事実確認のため、現在お墓のある寺院か墓地の管理者に署名・押印してもらいます。(改葬許可申請書に欄があり、これが 「埋葬証明 」となります)。そして移転先の墓地の管理者に、発行してもらう 「受け入れ証明書 」とともに役所の窓口に提出して 「改葬許可書 」を交付してもらいます。

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13-1-13.改葬当日は

改葬の手続きに必要な書類がそろったら、寺院や墓地に改葬の日時を告げます。

当日は手続きを済ませた後、僧侶に開眼供養をしてもらいます。ついで遺骨を取り出して移転先に運びます。

もし土葬などのため、遺骨が土に戻っている場合は、代わりに土を一握り白い布袋に入れて、それを移すといいでしょう。

◆友人と一緒の墓に入りたい

最近は、気の合った仲間や同志と一緒にお墓に入りたいという人も増えています。法律的には別に問題ありません。まず、仲間の人数分の骨壷が入るお墓を確保する必要があります。墓石や碑銘も仲間と一緒に考えておき、生前に造っておくと安心です。もし、家族や両親の墓にも入りたいというなら、分骨すればいいでしょう。

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13-2.仏壇を買う

13-2-1.買う時期

いつ買わなければならないという決まりはありませんが、身内に新しく仏が出て、自宅に仏壇がないというときに購入するのが一般的です。四十九日までに購入することが多いようです。

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13-2-2.どんな仏壇がいいか

まず、どの部屋に仏壇を置くか考えましょう。たんすや棚の上に置くタイプのものもあります。安置する場所を決めたら、幅、高さ、奥行きを測り、間取りにあったような大きさのものを買うようにします。値段はというと、実際は三万円程度から、家が一件建つくらいのものまでとかなりの幅があり「どれが」ということはありません。三十万円ぐらいから五十、六十万円あたりが最も人気のある価格帯といわれています。値段にこだわらず、自分の収入に見合ったもので、長く愛着のわくものを選びましょう。また、宗派により形が若干異なるものもあります。

塗り仏壇の場合は、表面を指で触ってみてざらつきがないか、塗りむらがないかをよく確かめておきます。

唐木仏壇は木目の美しさが魅力です。目立つところに節やひび割れがないかチェックしましょう。材質には黒檀、紫檀、桜、桐などがあります。

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13-2-3.置く場所

まず注意するのは、仏壇を拝むときに神棚にお尻を向けてしまうことになるといけないので、神棚と向かい合わないようにしましょう。また、家族の誰もが親しみやすく、しかも心を静かにできる場所におくようにします。あまり高すぎる位置に置くのは、忘れられがちになってしまうので避けたいものです。かといって、ご本尊を見下ろすような低い位置にもならないように気をつけましょう。

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13-2-4.仏具

仏具としてそろえるものは、五具足(香炉、燭台一対、花立て一対)、高杯、鈴と鉄棒、仏飯器と茶湯器、線香差し、マッチ消しのほか、戸帳(仏壇の上部に飾る装飾用の布で金襴などで作られている)、経机などです。宗派によって異なるので、寺院や仏具店などで必要なものを確かめて購入して下さい。

仏具の予算は仏壇の価格の二~三割といわれます。最低限必要なのは三具足(香炉、燭台、花立て)です。もちろん位牌やご本尊も必要です。いずれにせよ、予算を決めたら仏具店で見積もりを立ててもらうといいでしょう。

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13-2-5.飾り方

仏壇の飾り方は宗派によって違うので注意が必要になります。また、仏壇の大きさによっても飾り方が変わってきます。

●浄土真宗の場合

本願寺派と大谷派で異なりますが、共通するのは、上段中央に本尊の阿弥陀如来と脇仏の絵像を祀り、仏飯器、華瓶(樒などを飾る)を置きます。中段に香炉、花立て、燭台、下段に線香差し、前香炉、鈴を飾ります。位牌や遺影を祀ったり、水、茶などを供えたりはしません。

●真言宗の場合

上段中央に大日如来像を祀り、前に茶湯器を供えます。中段には過去帳を置き、左右に位牌を安置し、高杯、置灯籠を配します。下段には前机を置き、香炉、ろうそく立て、花立て、霊供膳を飾ります。仏壇の手前に経机を置き、鈴、数珠、燭台などを置きます。

(P134図参照)仏壇の飾り方の代表例

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13-2-6.開眼供養

開眼供養はご本尊や位牌に魂を入れるための供養です。仏壇を購入したら、まず菩提寺に連絡をして日取りを決めます。寺院で行うということになったら、本尊だけを持参して法要を行い、持ち帰って安置した後、線香をあげてください。

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13-2-7.仏壇を置かない場合

住宅の事情などで仏壇が置けないときは、たんすの上などに位牌や遺影を祀ってもよいでしょう。中央に位牌を置き、三具足を配して毎日お勤めするようにします。

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13-2-8.お勤めのしかた

仏壇の内部を整え、仏飯、お茶、花を供えます。ろうそくに灯をともし、線香を供え、合掌をして拝み、簡単なお経をあげます。ろうそくは、お勤めが終わったら消し忘れないようにしましょう。宗派によってお勤めのしかたは様々なので、わからないときは寺院などで確認するといいでしょう。

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14.神式、キリスト教式の葬儀

14-1.神式の場合


一般的な葬儀の流れ
神式葬儀では、仏式の葬儀・告別式にあたるものを「葬祭」というなど、儀式の名称やしきたりが仏式とは違ってきます。ですが、服装は仏式同様に正式な喪服を着ます。

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14-1-1.末期の水、死装束

臨終を迎えたら、末期の水をとって遺体を清め、死化粧を行います。これは仏式と同様の手順になります。死装束は、正式には新しい白い木綿の小袖を左前に着せ、白足袋をはかせます。最近では故人の愛用した浴衣などを着せることが多くなってきています。そして遺体は北枕(事情によっては西枕)にして安置します。

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14-1-2.帰幽奉告の儀

遺体を安置したら、神棚と先祖の霊を祭る祖霊舎(みたまや:仏式の仏壇にあたるもの)に死亡の報告をします。その後、どちらも扉を閉め、白紙を貼って封じます。

神道では遺族、親族は忌明けまで神社に入らないしきたりがあります。もし故人が生前に信仰していた神社があれば、代わりの人に出向いてもらい、死亡を奉告してください。さらに神官が神に奉告します。これを、「帰幽奉告の儀」と呼びます。また、神社で病気平癒などを祈願していた場合は「願ほどき」もやってもらいましょう。

◆奉告は遺族以外の人が行う

神道では、死をけがれと考えているので、「帰幽奉告の儀」や「願ほどき」は、喪に服さない人が代理人となって神社に赴きます。あくまで代理人に赴いてもらうのが一般的で、死者の家族はしばらくの間神社に入らないのがしきたりです。でしたがって葬儀も神社で行うことはありません。なお死亡の奉告は、代理人二人が神社に出向き、神官に伝えるようにします。

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14-1-3.枕飾り

遺体の枕元には枕飾りを施します。白い布で顔を多い、頭の側に逆さ屏風を立て、守り刀は小机に置くこともあります。そして白い布をかけた案(八脚の白木の小机)などの上に、常饌(故人の好物。生臭ものでもよい)か水、洗米、塩、御神酒を三宝にのせて置き、榊と、ろうそくを供えます。

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14-1-4.枕直しの儀

枕飾りがすんだら、神官を招いて枕直しの儀(仏式の枕づとめにあたる儀式)を行うのですが、現在は身内だけで拝礼することが一般的になっています。

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14-1-5.納棺の儀

遺体を棺に納める儀式が「納棺の儀」です。正式には神官が立ち会うのですが、葬儀社の人に手伝ってもらって身内で行うことが多いようです。まず一拝し、遺体と故人の愛用品などを棺に納めたら白布で覆い、祭壇の中央に安置。遺影などを飾り、血縁の濃い順に二礼・二拍手(しのび手といって音はたてない)・一礼を行います。

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14-1-6.柩前日供(きゅうぜんにっく)の儀

納棺から出棺までの毎日、朝夕二回、常饌を供え、親族が拝礼する儀式を「棺前日供の儀」といいます。故人の使っていた食器に箸を添えます。

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14-1-7.通夜祭

仏式の通夜にあたるのが「通夜祭」です。斎主(式を司る神官)、祭員、楽人とで行います。

参列者全員が席についたら手水の儀(手水のしかた参照)を行います。斎主が祭詞を唱えて一拝。この間参列者は深く頭を下げるように。誄歌(故人を偲ぶ歌)の後、喪主から血縁の濃い順に玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。玉串とは榊の枝に紙垂をつけたものです。

◆しのび手

神式葬儀では玉串奉奠などの際に、柏手を打ちますが、ふつうとは違って、音を立てずに行うのがしきたりです。やり方は両手を打つ手前で止めます。このしのび手は、忌明けまで行うことになっています。

◆手水のしかた

手水は心身の汚れを清めるためのしきたりです。

一回の柄杓の水を三度に分けて行います。まず、右手で桶から柄杓に水をくみ左手を洗います。次に柄杓を持ち替えて右手を洗います。再度右手に持ち替えて左手で残った水を受け、これで口をすすぎ、手を拭きます。人にかけてもらうときは、最初に手を洗い、次に水を手ですくって口をすすぎ、最後にまた手を洗います。

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14-1-8.遷霊祭

通夜祭に引き続き、遷霊祭を行います。遷霊祭とは故人の魂を遺体から霊璽(位牌にあたるもの)に移す儀式です。部屋の明かりをすべて消して暗闇の中で行います。一同手水、一拝の後、斎主が覆いを取った霊璽を棺のほうに向けます。斎主が遷霊詞を唱え遺体から霊璽に魂を移したら、祭壇に安置した仮霊舎に納めます。明かりをつけて祭詞を奏上し、最後に玉串奉奠を行って遷霊祭は終了。直会(通夜ぶるまい)へと移ります。神道では、通夜ぶるまいも含め、喪中に生臭ものを食べてもかまいません。

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14-1-9.霊璽とは

霊璽は仏式の位牌に似せて作られたもので、故人の姓名と生年月日、享年が書かれています。

これに霊を移らせることから、霊形・神主・霊代・霊主ともいい、ご神体(みたましろ)のことです。木製のため木主と呼ばれることもあります。ふつう遷霊祭には霊璽を用いますが、故人から特別に希望があれば鏡などでこれに代えることもあります。

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14-1-10.直会(酒食のもてなし)

通夜祭、遷霊祭が終わると直会となります。仏式と同じくお酒や食事でもてなし故人を偲びます。

食べ物は肉や魚でもかまいませんが、火を使うことを忌むため、仕出しなどの料理をふるまうことがほとんどです。

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14-1-11.葬場祭

葬場祭は仏式の葬儀・告別式にあたるものです。本来は遷霊祭までを自宅で行って、発柩式を経て葬場に移動するのですが、葬場祭までのすべてを自宅や斎場などで行ってもかまいません。

席次はふつう斎主、祭員、楽人が祭壇のそば、祭壇に向かって右に喪主以下の親族、左に世話役、友人などの関係者、後ろに一般参列者の順です。

まず、斎主が参列者をはじめとするすべてを清める 「修祓(しゅうばつ)の儀 」を行います。一同は深く頭を下げるようにします。神への捧げ物である神饌・幣帛の献上、奏楽と続いて斎主が祭詞を奏上し、故人の安らかな眠りと遺族への加護を祈ります。祭詞で故人の人柄や功績などを語るので、事前に斎主と相談しておきます。弔電紹介や弔辞の拝受の後、斎主の玉串奉奠に引き続き喪主から遺族、友人と関係の深い順に玉串を奉じます。神饌・幣帛が下げられて終了となります。

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14-1-12.出棺祭

葬場祭が終了すると、遺族や近親者は故人と最後のお別れをします。遺体の周りを生花で飾り、棺にふたをしたら仏式同様に喪主から順にくぎ打ちを行います。ただし、葬場祭のときに出棺の祭詞も奏上することが多いので、祭詞は省略されることがほとんどです。

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14-1-13.火葬祭

火葬場に着いたら 「火葬祭 」を行います。棺をかまどの前に安置して、葬場から持ってきた銘旗や生花を祀ります。一同手水の後、斎主が祭詞を奏上し、玉串奉奠、骨上げをして帰宅となります。(仏式とほぼ同様)

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14-1-14.後祓いの儀

出棺後、家には世話役など数人が残って、遺骨を迎える準備を行います。祭壇を片づけ、家の外の看板などを取り除き、部屋の掃除をします。手水の後、火葬場に同行しなかった神職者が仮霊舎や家の内外、一同を祓い清める 「後祓いの儀 」を行います。それから後飾りの祭壇をしつらえ、榊やろうそくなどを飾り、お清めのための水や塩を用意して遺骨の帰りを待ちます。

◆玉串奉奠(たまぐしほうてん)

玉串というのは、榊の枝に四つ折りにした紙、紙垂をつけたものです。神の意を人々に伝える役割をもつとされています。葬儀だけでなく、結婚式などの祭典でも使われます。

玉串奉奠の基本的な作法は

1.台に進み出て玉串を受け取る。右手で枝元、左手で葉先を持つ

2.枝元を手前に向けた後、左右の手を持ち替えさらに半回転させて、枝元を向こうにする。

3.台に捧げて一礼し、席に戻る

となっています。玉串は胸あたりの高さに持ち、常に時計回りに回します。

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14-1-15.帰家祭

神式では、正式には火葬場での骨上げの後に遺骨をその日のうちに墓地に埋葬し、納骨の儀を行います。しかし、最近では仏式と同様、いったん自宅に持ち帰り、忌明けまで安置することが多くなっています。

火葬祭が終わると遺骨は火葬場から自宅に戻ります。まず喪主らが全員お祓いをしてもらい、手水を使い、塩をまいて穢れを清めてから家に入ります。次に霊璽を後飾りの祭壇に祀って遺影や遺骨をその脇に置いて帰家祭となります。これは葬儀が無事終わったことを奉告する儀式。神官の祭詞奏上、一同による拝礼、玉串奉奠などを行います。すべてが終わったら直会を催し、参列者を酒食でもてなします。

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14-1-16.霊祭

霊祭とは、仏式でいう法事のようなものです。葬儀翌日に行う翌日祭から、十日目ごとに五十日まで行われる毎十日祭と百日祭、その後一年、三年、五年、十年、二十年 ・ ・ ・と式年祭が続きます。納骨は毎十日祭の都合のよい日に行えばいいでしょう。

翌日祭は墓前や霊前に葬儀の終了を奉告するもの。墓前か自宅で行います。本来は神官を招きますが、身内でとり行うこともあります。

五十日祭は神官と親族、友人・知人を招き、墓前や霊前に洗米、塩、水、故人の好物、花などを供え、神官が祭詞を奏上し、玉串奉奠を行います。その後、宴席を設けて出席者をもてなします。

その翌日、神官と遺族とで祓い清め、神棚の封を解く 「清祓いの儀 」を行います。そして、仮霊舎の霊璽を祖霊璽に合祀して、忌明けとなります。

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14-2.プロテスタントの場合

14-2-1.危篤から納棺まで

信徒が危篤状態になったら、まだ息のあるうちに家族が牧師を呼びます。カトリックも同様ですが、仏式とは勝手が違いますので注意が必要です。

牧師が到着したら、信徒が洗礼を受けている場合は聖餐式を行います。受けていない場合は臨終の祈りを捧げます。このとき、家族や臨席者も牧師と共に祈ります。聖餐式とは牧師が信徒にパンとブドウ酒(パンとブドウ酒はキリスト血と肉を意味しますので、ブドウ酒は”赤”)を与え、安らかに天国へ招かれるように祈る儀式です。

牧師が臨終に間に合わなかった際は、遺体をそのままにして牧師を待ちます。

医師から臨終を告げられたら、家族は末期の水をとり、死装束を着せて、納棺を行います。納棺には牧師を呼び、牧師の祈りの後、遺族の手で棺に納めます。遺体の周りは白い花で埋めつくし、ふたをした後、棺を黒布で覆って上に十字架をのせます。

一般的な葬儀の流れ

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14-2-2.前夜祭

納棺に続いて行われる前夜祭は、仏式葬儀の通夜にあたります。棺を安置した部屋に遺族や近親者、友人が集まり、故人が愛唱した賛美歌を斉唱。聖書を朗読し、牧師が祈りを捧げます。その後献花を行いますが、仏式にならい焼香することもあります。通夜ぶるまいの慣習はありませんが、茶菓や簡単な食事で参列者をもてなし、故人を偲ぶことも多いようです。

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14-2-3.自宅からの出棺

教会によっても異なりますが、前夜祭、葬儀とも教会で行う場合と、葬儀のみ教会で行う場合があります。後者は、棺が自宅を出る際に牧師が喪家を訪れ、出棺の祈り、賛美歌を捧げた後、棺を霊柩車で教会に運びます。

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14-2-4.葬儀

先に到着していた一般参列者に迎えられて棺が入場します。式は牧師の言葉、聖書朗読、故人の愛唱した賛美歌の斉唱、弔辞拝受、弔電紹介などで進みますが、信徒でなくても、ともに歌い祈ります。この後、黙祷を捧げ献花へ移りますが、この献花が仏式の焼香にあたります。

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14-2-5.火葬、家に帰ってから

火葬場へついたら、棺の上に十字架や花を飾り、牧師による祈りの後、一同で棺を囲んで賛美歌を斉唱します。これを火葬前式といいます。

骨上げのしかたは、仏式とほぼ変わりません。キリスト教ではとくに祭壇などは設けないので、自宅へ戻った遺骨は納棺(埋葬)まで机の上などに遺影や十字架とともに飾ります。

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14-2-6.記念集会

亡くなってから一ヶ月後に、召天記念日として記念式を行います。牧師を呼び遺族や近親者一同で祈りを捧げますが、自宅か墓前で行うことが多く、納骨を行うこともあります。また、仏式の法要に当たる記念集会を、通常、数年ごとの命日に行います。

◆信者でなくても葬儀はできる

プロテスタントの場合は、故人の意志や教会員の依頼によって信者でなくても葬儀を行ってくれます。プロテスタントでは個人の信仰心を中心とするため、葬儀式も簡略化されています。ただし、作法上戸惑うことがないように、信者でない遺族や参列者によく説明しておくことが大切です。

◆献花の仕方

献花は、仏式の焼香にならって行われる日本独特のしきたりです。献花には菊やカーネーションなどの茎が長くて白い花を使用します。花の部分を右側にして受け取り、左の手のひらは下向きにします。そのまま献花台に進み、花を手前に回して捧げます。信者は献花の後に十字を切りますが、信者でない場合は十字を切る必要はなく、黙祷か一礼すればよいでしょう。

献花のしかた(図参照)

1.花を右、茎を左にして受け取る

2.花を手前にして献花台に捧げる

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14-3.カトリックの場合

14-3-1.終油の秘蹟、臨終

信徒は臨終の際に、神父から終油の秘蹟を授けてもらいます。これは罪の許しを請い、神の恵みを受けるための儀式です。

信徒が危篤になったら、家族は神父を呼びます。神父は秘蹟の言葉を唱えながら、病人の額と両手に塗油し、臨席者一同で主の祈りを捧げます。臨終を迎えたら神父は罪の許しを与えて祝福を授けますが、神父が臨終に間に合わなかったときは、遺体はそのままで神父を待ちます。

一般的な葬儀の流れ

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14-3-2.納棺

神父を呼び、遺族や近親者一同で聖歌を斉唱した後、神父の納棺の言葉を受けて遺体を納棺します。遺体は仏式と同じように死化粧をして死装束を着せます。納棺時に遺体の両手を胸の上で組ませ、個人愛用の十字架やロザリオを持たせます。遺体の周囲は白い花で埋め、棺を黒布で覆い十字架をのせます。

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14-3-3.通夜のつどい

納棺の後、通夜のつどいを行います。遺体を安置した祭壇の小机に遺影、十字架、聖水などを飾ります。神父と遺族、参列者が着席し、神父の聖書朗読、説教が終わったら献花。遺族のあいさつの後、茶菓でもてなして故人を偲びます。

◆キリスト教の葬儀での服装

葬儀の服装は喪主は正式喪服、親族は略式喪服で参列します。基本的には仏式と同様です。

カトリック信者の女性は教会の中では黒か濃いグレーのベレー帽と黒のベールをかぶることになっています。しかし、このベールは信者以外の人はかぶる必要はありません。

◆献花は生花で

献花は菊やカーネーションなどの茎が長くて白い生花が用いられます。茎が長いと手に持ちやすいということから、こうした生花が選ばれたと考えられます。花の種類は選べるので、故人の好きな花や希望の花があれば葬儀社に言っておくといいでしょう。

なお、欧米などでは墓地に棺を埋葬する際に花を捧げますが、葬儀のときには日本の献花のようなやり方はしません。

◆献香と撒水

キリスト教本来のしきたりです。献香とは、神父が香炉を振りながら棺の周囲を回り、故人の生前の信仰や善行により罪を清めることを意味する儀式で、一方、撒水とは、聖水(教会で祈りを捧げた水)を棺に注ぐ儀式で、献香と同じような意味をもちます。

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14-3-4.葬儀ミサ

通夜を自宅で行った場合は、一同出棺の祈りを捧げて教会へ送り出します。棺が教会に到着したら、神父が聖水を注ぎ、祭壇の前に安置します。神父が祭壇と棺に献香してから開祭の言葉を述べます。

神父とともに聖書を朗読し、説教の後故人のために 「共同祈願 」を行います。キリストの体と血の意を持つとされるパンとぶどう酒を捧げて、神父が感謝の祈りを行います。この後追悼説教をし、 「赦祷式 」に入ります。その後告別式、出棺、火葬と続きますが基本的にはプロテスタントとほぼ同様と考えるといいでしょう。

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14-3-5.追悼ミサ

亡くなった日から三、七、三十日目に教会で追悼ミサを行いますが、とくに一年目の祥月命日は盛大に行われます。遺族、近親者一同が参列し、聖書を朗読して聖歌を斉唱。その後、簡単な食事会を開いて故人を偲びます。なお、遺骨の埋葬は七日目か一ヶ月目の追悼ミサに行うことが多いようです。

◆神父(牧師)への謝礼

プロテスタントでもカトリックでも、葬儀に関する教会へのお礼は献金という形をとり、表書きは 「謝礼 」か 「御礼 」とします。これとは別に、神父・牧師や聖歌隊、オルガニストにもそれぞれお礼を渡します。この場合の表書きも「謝礼」・ 「御礼 」でいいでしょう。また神父や牧師に足を運んでもらった場合は 「御車代 」も忘れずに。

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